オナラはなんでも知っている

4月20日 水曜日
 前日の火曜日、誠寿に話をした忠彦はその夜正式に萌美に告白して付き合うようになった。だがその代償は大きく、この日忠彦は友達を三人失ったことに気が付いた。
 忠彦は教室に入り、いつものように英治に「おはよう」と挨拶する。だが英治からの返事はなかった。忠彦は返事がなかったことを気にかけながら自分の机に座ると、目の前を陽介が通った。「おはよう」陽介からも返事がなかった。忠彦はなんとなく英治を見る。英治のところには誠寿が来ていた。忠彦は二人がこちらを見たら合図をしようと思って見ていたのだが、二人がこちらを向くことはなかった。
 その後も忠彦は英治に話しかけようとするのだが、タイミングが掴めない。タイミングが掴めないというより、自分のことを無視しているのではないかと感じ始めた。誠寿ならともかく、英治や、陽介まで・・・。忠彦は思い切って英治に声をかけてみた。
「あのさ、今日の宿題なんだけど」
 英治は席を立ち、誠寿の元へ行くと楽しそうにおしゃべりを始めた。
『無視されている』
 忠彦は焦った。陽介のもとへ行き、話しかけようする。すると、陽介はあからさまな態度を取り「もう、友達はやめだ」と言ってきた。
 授業が終わり、下校の時間となった。忠彦は英治達を見るのだがやはり無視され、もう前のように一緒に帰ることはないと改めて悟った。
 一方の英治と誠寿と陽介の三人もなんとなく一緒に帰る気分にはなれなかった。
 英治は誠寿ばかりか忠彦にも負けたという男としての劣等感から肩を並べる気になれなかったし、ましてや変態でバカにしている陽介と一緒に帰る気にもなれなかった。誠寿は誠寿で英治と陽介と馬鹿話で帰るような気分ではなかった。陽介は二人と一緒にいるよりもメアリーの後ろをついて帰りたかった。
 仲のよかった四人は、それぞれ別々に帰ることになった。
 
 そんな中、事件が起こった。

 メアリーが一緒に帰るために正門で待つ徳乃真のところに行くと、教室のロッカーに体操服を置いてきたことを思い出した。
「ちょっと待ってて、教室に体操服忘れたから」と言って踵を返す。
 徳乃真は「早く戻らないと誰かに匂い嗅がれるかもなぁ」と声をかけてきたが、近くにいる女子の視線を優先して一緒に付き合おうとはしなかった。