オナラはなんでも知っている

『そりゃそうだよ。忠彦みたいなやつは世の中に出れば掃いて捨てるほどいるしさ、徳乃真だって顔がいいだけのバカなんだから今がピークだよ。やっぱり頭が良くないとダメだよ、俺勉強するよ』
 『あぁ』
『英治なんてこんなに頭がいいし、髪型を変えて、おしゃれな服を着て、そしたら』
 『そしたら?』そしたらなんだ、そしたらなんだっていうんだ?
『そしたら、きっとメアリーぐらいがお似合いになるんだろうな』
 『そうかな?』僕がメアリーとお似合いだって・・・。誠寿はそう思っている。やっぱりだ、やっぱりそうなんだ、僕にお似合いなのはメアリーなんだ。
『そうだよ、英治ぐらい頭がいい男はやっぱりメアリーぐらいがふさわしいんだよ』
 夜の暗い部屋の中で、誠寿は英治とメッセージを送り合った。メッセージを送っていればほんのちょっとだけ気が紛れた。忠彦の悪口を書き続け、書き続けているうちに誠寿は昔から忠彦のことが嫌いだったと思うようになった。友情の感覚は見事に消し飛び、憎しみが倍増していく。あんなやつ、あんなやつ、あんなやつ・・・。
 一方の英治は誠寿から持ち上げられ、持ち上げられ続けているうちに、書かれていることに自信を持って行った。最後は頭のいいやつが勝者になって、頭のいい者こそメアリーのような美しい女性を恋人にできる。メアリーにふさわしいのは自分だ。他の誰でもない自分こそがふさわしい人間だ・・・。そう思うようになって行った。