オナラはなんでも知っている

 誠寿は一人自分の部屋にこもっていたが、頭がカッカしてしまいどうにも自分の気持ちをコントロールすることができなかった。椅子から立ち上がったと思えばまた座り、また立ち上がり、窓の外を見てはまた椅子に座る。思い出すのは、今日昼間に忠彦から言われた「付き合うことになったんだ」の一言だった。あれは本当のことだったのか? あの時はショックのあまり確かめずにあの場を去ってしまったが、もしかしたら・・・。本当はあれは忠彦の願望で、萌美はまだ返事をしていないのではないか。これはもしかしたら自分に向けた萌美からのメッセージで、よりを戻すのなら早くしないと忠彦と付き合っちゃうよ。と暗に伝えているのではないか。だとすると・・・。萌美に確認しなくては。萌美の気持ちを確認しなくては・・・。誠寿は震える手で携帯をとり、メッセージを打つ。そして、勇気を出して送信した。
『誠寿だけど、ちょっと聞きたいことがあって、いい?』
 『何?』
 画面を見つめているとすぐに萌美から返事が返ってきた。心臓がドキリと跳ねる。確かめておかなければ。もしかしたら忠彦のバカが早合点しているだけかもしれない。誠寿はそう願いながらメッセージを送った。
『忠彦が言ってたんだけど、忠彦と付き合うの?』
 『うん』
 誠寿は、携帯に現れたメッセージに愕然とする。
 『もう、正式に付き合ってるんだ』
 『忠彦君、誠寿君に悪いからそのことだけは話したいって言ってた。誠寿君もわかってくれるでしょう。私幸せになるね』
 な、なんだこれは、なんなんだこれは! 誠寿はあまりのショックに唇が震えた。目がカッと熱くなり涙が出てくる。萌美はまだ自分が好きなことを知っているのに、そのことはまるでなかったかのように気持ちを断ち切っている。
 『忠彦君に悪いから、もうメッセージも送らないね』