このクラスにもキスをした男子生徒は数名いる。だが、舌遣いがうまいという表現を使うようなキスをしたものはいなかった。この前初めてキスをした忠彦もこれには聞き耳を立てた。
英治は徳乃真の話など本当は聞きたくなかった。メアリーが汚されていくようで耐えられない。だが自分の気持ちとは裏腹に誰よりも集中して徳乃真の話を聞いた。一言一句聞き逃すまいと聞いて、そして身が捩れるほど苦しんだ。メアリーの香りってどんな香りなんだ? メアリーの唇って一体どんな唇なんだ? メアリーのあの可愛らしいピンクの舌ってどんな絡み方をするんだ。唾液と唾液が絡み合うってどんな味がするんだ?
「キスというのは舌を絡ませて初めてキスと呼ぶようなもんだ。オレがいうのもなんだけど、メアリーはその舌の絡ませ方が絶品なんだ。そして最後に下唇を噛んで来るんだ。こう言う感じだ」徳乃真はそう言うと自分の下唇を上の歯で噛んでみせた。そしてプルンと押し出す。
「おぉう」それを見ていた男子生徒から声が漏れた。
「おっ、時間だな。この続きはまた今度だ」
そう言うと今日の話はここまでとばかりに徳乃真は椅子から降りてしまった。
授業が終わり下校の時間になると、英治は教室の真ん中を通って不自然にならないようにメアリーが座っていた机の横を通った。誰にも気づかれないように息を吸い込む。少しでもメアリーの残り香が感じられればと。すると、ほのかにいい香りがした・・・そんな気がした。気のせいかもしれない。それでも英治は嬉しかった。
英治が校舎を出ると忠彦と陽介が待っていた。誠寿とはもう一週間近く一緒に帰っていない。英治は誠寿のことが気になった、もっと言えば、誠寿と忠彦のことが気になっていた。忠彦は誠寿に話をしたのだろうか・・・。そういえば忠彦は今日の授業中具合が悪そうで、保健室に行っていたことを思い出した。
「忠彦」
「何?」
「もう、大丈夫なのか? 今日、ずいぶん具合が悪そうだったけど」
「あぁ、もう大丈夫。すっかりよくなったよ」
そう言う忠彦の顔色は確かに戻っていた。
「何、風邪?」
「いや」
英治はさらに昼休みに忠彦と誠寿がいなくなっていたことを思い出した。「もしかして、昼休み・・・」
「あっ、あぁ」
「あれって?」
「うん。あれを話してたんだ」
「話したのか」
「あぁ」
英治は徳乃真の話など本当は聞きたくなかった。メアリーが汚されていくようで耐えられない。だが自分の気持ちとは裏腹に誰よりも集中して徳乃真の話を聞いた。一言一句聞き逃すまいと聞いて、そして身が捩れるほど苦しんだ。メアリーの香りってどんな香りなんだ? メアリーの唇って一体どんな唇なんだ? メアリーのあの可愛らしいピンクの舌ってどんな絡み方をするんだ。唾液と唾液が絡み合うってどんな味がするんだ?
「キスというのは舌を絡ませて初めてキスと呼ぶようなもんだ。オレがいうのもなんだけど、メアリーはその舌の絡ませ方が絶品なんだ。そして最後に下唇を噛んで来るんだ。こう言う感じだ」徳乃真はそう言うと自分の下唇を上の歯で噛んでみせた。そしてプルンと押し出す。
「おぉう」それを見ていた男子生徒から声が漏れた。
「おっ、時間だな。この続きはまた今度だ」
そう言うと今日の話はここまでとばかりに徳乃真は椅子から降りてしまった。
授業が終わり下校の時間になると、英治は教室の真ん中を通って不自然にならないようにメアリーが座っていた机の横を通った。誰にも気づかれないように息を吸い込む。少しでもメアリーの残り香が感じられればと。すると、ほのかにいい香りがした・・・そんな気がした。気のせいかもしれない。それでも英治は嬉しかった。
英治が校舎を出ると忠彦と陽介が待っていた。誠寿とはもう一週間近く一緒に帰っていない。英治は誠寿のことが気になった、もっと言えば、誠寿と忠彦のことが気になっていた。忠彦は誠寿に話をしたのだろうか・・・。そういえば忠彦は今日の授業中具合が悪そうで、保健室に行っていたことを思い出した。
「忠彦」
「何?」
「もう、大丈夫なのか? 今日、ずいぶん具合が悪そうだったけど」
「あぁ、もう大丈夫。すっかりよくなったよ」
そう言う忠彦の顔色は確かに戻っていた。
「何、風邪?」
「いや」
英治はさらに昼休みに忠彦と誠寿がいなくなっていたことを思い出した。「もしかして、昼休み・・・」
「あっ、あぁ」
「あれって?」
「うん。あれを話してたんだ」
「話したのか」
「あぁ」

