オナラはなんでも知っている

『なんだ、一体なんだと言うんだ。僕の秘密がバレるはずはない』
「お前、俺のチンコ見ようとしてるだろう」
「そ、そんなことないよ」
「もしかして写真でもとって女に売りつけようとしてんじゃねぇか。紫苑抑えとけよ」
「おぅ」
「一発かましてやる」
「やれやれ」
『殴られる!』と思って啓は目をつぶり身を固くした。だが、衝撃はやってこなかった。その代わり、かちゃかちゃという音が聞こえた。啓が恐る恐る目を開けると徳乃真がベルトを外し、ズボンを脱いでいた。
『何をする気だ。徳乃真は一体何をする気だ!』
「やめて、やめてよ・・・」啓の声は小さく震えた。
 徳乃真は相変わらずニヤニヤ笑いながらズボンを下ろし、ボクサーパンツ一枚になった。
「何、何をするんだよ?」
 徳乃真がニヤニヤ笑う。紫苑もニヤニヤ笑っている。徳乃真が後ろを振り向くとパンツ一枚の尻を啓に近づけた。啓の顔に徳乃真の尻がつく。
 その次の瞬間徳乃真が「ん!」と唸ったかと思うと、『ブッ!』と、強烈な屁をかましてきた。
「ウワァ、でけぇ屁!」紫苑が顔をしかめる。
「いいか、オレのチンコを覗き見するんじゃねぇぞ!」そう言って徳乃真と紫苑は去っていった。
 啓はニヤリと笑った。
 こんな具合にチャンスがやってくるとは思わなかった。オナラが薄まらないうちに啓は思いっきり息を深く吸う。そこには徳乃真のオナラがまだ充満している。秘密を探るには十分だ。ゆっくりと大きく、味わうように二度三度息を吸う。徳乃真のオナラが存分に肺に入ってくる。すると啓の頭の中でイメージが作られていく。モザイク模様のパズルがどんどん一つの絵のように組み上がっていく。
 啓はオナラで人の心がわかる。
『徳乃真はメアリーにぞっこんだ。早くセックスしたがっている・・・!』
『男としての圧倒的な自信・・・』
『友達のはずの紫苑でさえバカにする優越感・・・』
 さらに、その奥には徳乃真の心の奥底に隠された秘密、消し去ることができない心の傷、弱点、プライドが高い故の弱み、絶対に人に知られたくないだからこそ意識してしまう秘密・・・暗い、暗い事実が組み上がる。
「なんてこった!」
 稲妻が走った。
『こんな、こんなすごい秘密があったなんて、これならこの秘密をバラしたら女子はみんな引く!』
 いいネタをつかんだ。これこそまさに依頼者が求めていた秘密だ。

4月19日 火曜日