オナラはなんでも知っている

『この子を失いたくない。自分は今まで友達に遠慮ばかりしてきた。でも、萌美さんだけは萌美さんだけはもう遠慮なんてしたくない』
「誠寿君に・・・言ってくれた?」
「まだ、なんだ」
 萌美も言いにくそうに聞いてきた。きっと自分と付き合えるのを待っているんだ。自分がしっかりしなければいけないのにと思う。
「ねぇ、忠彦君、ちょっと耳貸して」
「何? 何?」
 忠彦がちょっと膝を曲げる。萌美が周りを気にしながら顔を近づけてくる。すると、不意に、それはあっという間に、萌美が忠彦の口にキスをした。忠彦の全身はカッと火がついたように熱を帯びた。皮膚がピリッと痛み、心臓がドクンと飛び跳ねる。忠彦にとってはもちろん初めてのキスだった。
『キスだ、今のはキスだった。僕はキスをした!』
 自分の口に萌美の柔らかい唇の感触が残っている。心なしかピーチの甘い香りがする。思わず、唇を舐めてしまった。かすかに甘い味が口に広がる。
 萌美はいたずらっ子のように笑っている。
「萌美はもう忠彦君のもの」
 そういうと、萌美は忠彦の腕に自分の腕を絡めて歩き始めた。
『誰か僕たちのことを見てくれ』忠彦の心が叫ぶ。
『僕は今女の子と二人で帰っている。いや、ダメだ。誰も僕たちに気づかないでくれ』とも思う。もし誰かに見られ、からかわれでもしたら繊細な自分たちの小さな恋はその瞬間にはじけて消えてしまう・・・。嬉しいやら誇らしいやら恥ずかしいやら照れ臭いやら、気持ちが激しく揺さぶられる。
 ただ、女子とキスをするなんて数日前までは夢のまた夢だと思っていた。高校生のうちでは無理かもしれないと薄々思っていた。それが・・・、どうだ・・・。しかも今は腕を組んでいる。その腕が、その腕が、萌美の大きなおっぱいに当たっていた。腕が、燃えるように熱い。しかも、プニュプニュしている・・・。