オナラはなんでも知っている

 英治も、陽介も、誠寿も、忠彦もまだ本物のおっぱいすら見たこともない。英治と陽介と忠彦の三人はセックスなど自分たちには一生そのチャンスが訪れないのではないかとさえ思っていた。
 誠寿はさらに辛くこの言葉が胸に刺さった。つい一月前まではおっぱいが手に届くところまできていたのに、さらにその先にはセックスがあったかもしれないのにと、悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。『こんなことならせめておっぱいを触ってから別れれば良かった。絶対に、絶対によりを戻さなければ・・・』と思った。
 そんなモテない男たちの気持ちなど想像したこともないというように徳乃真は続ける。
「セックスしたらお前らに感想教えてやるよ。マンコの形はエロ動画を見て知ってるだろうから、おっぱいの感触とか、チンコを入れた時の射精しそうな気持ち良さとか。な、楽しみにしていてくれ!」
 それを聞いて男子生徒はさらに妬ましく、唸り声が漏れた「うぬぬ・・・」。
「本当にやらせてくれるのかよ?」紫苑が尋ねる。
「そりゃ付き合ってるんだから、チューとか、セックスだろうよ」
「お前チューはもうしたのか?」
「まだ。だけどよ、物のはずみでチューしたらそのままセックスするかもしれないだろう。だから今のうちに宣言した方が、みんなも楽しみが増えるだろう」
「だな」
『聞きたい、いや、聞きたくない。いや、聞きたい、いやいやいや聞きたくない・・・』男子生徒の気持ちの中で聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちがせめぎ合う。聞いてしまったら自分もしたくなる、でも相手がいない。せめて話だけでも聞きたい、その世界を知りたい。でも聞いたら自分もしたくなる・・・。でも相手がいない。でも聞きたい。堂々巡りの思いに結論は出ない。
「きっと、めちゃくちゃよがるんだぜ」
『よがる・・・』男子生徒の頭の中はエロ動画でしか知らない世界が駆け巡った。

 午前中で授業が終わり下校の時間、愛美が階段を降りていると、前を降りている男子が三人ほどでぺちゃくちゃ喋っていた。一人はその声と背中の感じから1年生の時に同じクラスだったお調子者の健太郎のようだった。聞くともなしに聞こえたきた話からどうやら徳乃真のことを喋っているらしいことがわかった。
「メアリーとセックスするってよ」
「マジかぁ」
「したら感想教えてくれるって」
「マジかぁ」
「いいよな徳乃真と同じクラスは」