オナラはなんでも知っている

 そしてついに放課後になった。まだ誰も教室から出てないうちから萌美はゆかりを連れてダッシュで教室を出た。そのまま走って階段を降りて、校舎を飛び出る。
「誰かにとられてたらどうしよう・・・。まだあるかな?」
「大丈夫、私たちが最初だから」
 二人は全速力で正門に向かう。前には誰も生徒がいない。後ろを振り向くと校舎からぞろぞろ生徒が出てくるところだった。
『みんなが来る前に』萌美はそのままの勢いで正門を出た。自分たちが一番最初だ。萌美は後ろから生徒がまだこないことを確認して、黄色い鳥を外し、その下を手で掘り出した。カプセルはすぐに見つかった。
「あった」
 萌美は土のついたカプセルを取り出すと、軽く土を払って、ゆかりに見せた。「ほら、カプセル」
「本当だ」ゆかりは本当にカプセルが埋まっていることにびっくりした。どこかで萌美の作り話だと思っていたからだ。さらに昨夜のことを思い出した。ここの手入れをしていたのは同じクラスの啓。もしかしたら情報屋というのは啓なのか?
 二人は早歩きで進み、民家の壁の影に隠れるようにして呼吸を整えた。
「開けるね」萌美は自分に言い聞かせるようにして、覚悟を決める。そしてカプセルを開けた。中には折り畳まれた一枚の紙が入っていた。萌美はすぐに紙を見ようとせずに深呼吸をして気持ちを落ち着ける。どんな言葉が書かれていようと平静さを保たなければならないそう思いながら紙を広げていく。
 ゆかりは遠慮して少し離れた。
「見るよ」萌美は自分にそう言って、広げた紙に視線を落とした。
 萌美の表情がみるみる変わり、顔が紅潮していく。目がウルウルして口元を手で抑える。ゆかりが心配顔で尋ねる。
「どうだった?」
 萌美がその紙をゆかりに差し出した。
『忠彦が気になっている女性は萌美、メアリー、愛美。その中でも特に萌美のことを快く思っている。それは好きだという感情だ』
 ゆかりが萌美を見ると、二人して声が出た。
「ひゃー!」
 萌美とゆかりは手を取り合ってぴょんぴょんその場で飛び跳ね喜びあった。
「やったじゃん」
「うん。嬉しい、すごく嬉しい」
 萌美の喜び方はまるで好きな人から告白されたかのような喜びようだった。
「よかったね」
「うん」
 二人が喜んでいると後ろから生徒が追い越し始めた。