オナラはなんでも知っている

 陽介は小学校の時から女子のパンツが気になって仕方がなかった。小学校の頃はそれがどんな意味を持っているのかよく分からなかったが何か本能に突き動かされるようにパンツを見てはドキドキしていた。中学になると自分の性癖をきちんと自覚するようになり、その意図をきちんと持って女子を見ていた。街に出かければスカートの短い人の後を好んで歩き、マンションのベランダを見てはそこに干してあるパンティーを見て想像を膨らませた。そして高校生になるとネットで見つけた盗撮に使えるカメラを購入して、カバンに細工してこっそり自分だけの動画を集めるようになった。それが『学校』のフォルダだ。
 『学校』のフォルダをクリックするとたくさんの動画がずらりと並ぶ一覧が出てくる。タイトルのかわりに数字が振られている。その一つをクリックする。画面いっぱいに再生された動画は陽介と同じブレザーを着た女子が階段を登っている姿を下から撮影したものや、どこかの教室で女子が足を組み替えた瞬間の動画だった。数秒から数十秒で動画が終わる。そうやって幾つかの動画を見ていると隣の部屋から咳払いが聞こえ、陽介は慌ててパソコンを閉じた。耳を澄ますと隣の部屋から父親の寝返りを打つ音が聞こえてきた。きっと寝付けないのだろう。陽介は動画を見るのを諦めると、畳の上に敷かれた薄い布団に潜り込みメアリーのことを考えた。
『一体どんなパンティーを履いているのだろう・・・。なんとかして見ることはできないだろうか・・・。せめて、夢の中でパンティーが覗けますように』と、願いながら眠りについた。

 誠寿は毎夜毎夜ベッドの中で萌美の写真を見ていた。ベッドの中で見るたびに思いは積のり、失ったものの大きさを嘆く。本当だったら楽しい2年生になるはずだった。たまには一緒に帰ったり、デートをしたり、萌美の作るお弁当を一緒に食べたり。将来的には英治や忠彦に萌美の友達を紹介しようとも思っていた。
「英治も、忠彦もいいやつだよ。もしよかったら萌美ちゃんの友達誰か紹介してあげてよ」
「私の友達で彼氏いない子いっぱいいるよ」
「英治は頭がいいし、忠彦はすごくいいやつだから」
「うん。でも私は誠寿君が一番いい」
 記憶の中の萌美が微笑みかける。写真をスワイプする、セーターを着た萌美が出てきた。あのときどんな会話をしただろうと記憶をたぐる。
「私セーターを着るのちょっと嫌なんだ」