「えっ、そうなの?」ゆかりは萌美の突然の告白にびっくりして思わず立ち止まってしまった。そういえば付き合い始めた当初は誠寿のことを楽しそうに話していたが、ここ最近萌美の口から誠寿の話題が出なかったことを思い出した。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「知らないわよ」
「あっ、ごめん」
「どうして」
「だって、誠寿君すぐおっぱいを触ろうとするんだもん」
「そうなの?」
「そうよおっぱいばっかり。そりゃさぁ、おっぱい触りたい気持ちもわからないでもないけどさぁ。すごい視線を感じるんだ」
 ゆかりは自分のおっぱいがあまり大きくないからなのか、そんな視線を感じたこともなく、だから萌美の言っていることがいまいちわからなかった。
「その事でなんだけどさぁ、誠寿から復縁迫られてて困ってるんだよねぇ。もし誠寿君に相談されたら何かうまいこと言ってね」
「うん、まぁ、私に相談するとも思えないけどね」
「まあね。何せ、幽霊と友達だもんね」
「そうそう」
 そう言ってゆかりも萌美も笑った。その笑いがひと落ち着きすると、「いまね、ちょっと気になってる人がいるんだぁ」と萌美が言った。
「知ってるわよ。徳乃真君でしょう?」
「違うわよ、徳乃真様は手の届かない憧れ。私が気になっているのは忠彦君」
「ウッソ!」ゆかりは想像もしていなかった名前にびっくりした。
「なんで?」
「意外。だって、忠彦君て大人しいあの子でしょう。萌美のタイプって徳乃真君でしょう。似ても似つかないじゃない」
「徳乃真様は憧れだからいいの。付き合えるとか、手が届くなんて思ってないし、遠くから眺めていられればそれで十分。だから現実的なところで忠彦君」
「割り切ってるのね」
「当たり前じゃない」
「あのさ、変なこと聞くけど、忠彦君のどこがいいの?」ゆかりには萌美が忠彦に惹かれる理由が全く分からなかった。
「忠彦君て、人の悪口言わないでしょう。優しいし」
「うぅん、そういえば、私忠彦君とあまり話したことないなぁ」
「優しいのよ」
「へぇ。もう好きなんだ」
「・・・まあね。だから忠彦君が私をどう思っているのか確かめようと思って」
「直接?」
「違うわよ」
「えっ、ちょっと待って、無理無理無理。私、忠彦君と話したことないのよ」ゆかりは忠彦の気持ちを聞き出して欲しいと言われるのかと思ったが、そうではなかった。