みんなそれぞれの想いを持って徳乃真の宣言を受け止める。すると紫苑が「お前、彼女いるじゃん」と言った。確かに徳乃真はメアリーがこの学校に転向してくるまで同じ2年の中でとびっきり可愛い紗里亜と付き合っていた。ところが「あぁ、今日別れるよ」と徳乃真はこともなげに言った。そこには彼女を愛しているとか、彼女に悪いとかそういった感情はまるでなかった。
「オレは考えたんだが、オレ以外にないでしょう」
「もし、メアリーに付き合ってる奴がいたらどうするんだよ?」紫苑がみんなの思っている疑問を口にする。
「普通オレを選ぶでしょう」徳乃真は自信たっぷりにこともなげに答えた。
「相手が大学生とかかもしれないよ。同じようなハーフとか」
「ハーフって、オレが負けるかよ」
「おぉすごい自信。でもまぁ、メアリーと釣り合いが取れるのはお前ぐらいかぁ」
「みんな楽しみにしてくれ」と言って自ら拍手を促し、男子が拍手をする中で椅子から降りるとこの話はこれで終わった。

 放課後、いつものように啓は自分の担当する花壇で花のお世話をしていた。
 英治たち四人が正門を出て、そこに啓がいることに気づくことなく下校していく。四人の話題は徳乃真の宣言についてだった。
「徳乃真はメアリーと付き合えるのかな?」英治が聞く。
「いや、今度だけは徳乃真も振られるかもよ」陽介があたりをキョロキョロしながら答える。
「それでもいいよなぁ。今付き合ってる子も紗里亜だろう」
 陽介は前を行く女子のスカートが翻るチャンスをうかがいながらの会話だったため、会話の中で、「あっ」とか「惜しい」と脈略もなく呟くことがあった。「忠彦だって、あっ、そう思うだろう?」
「そうだね」忠彦は話を振られた時だけ、なんとなく肯定していた。メアリーが誰と付き合おうとあまり興味はない。
「所詮顔なのかなぁ」と、寂しそうに英治がつぶやく。英治は自分の顔にコンプレックスを持っていた。顔が大きく、眉毛が濃い。顔立ちも濃いと言ったらいい言い方になるが、ようはバランスが悪い。しかも身長が低く、痩せているから体と顔のバランスもすこぶる悪い。
「そりゃそうだろ」陽介が答える。
「俺たちが高校生じゃなかったらなぁ」
「どうして?」