『・・・やっぱり、俺には萌美しかいないんだ』
 ベッドに寝転びながら誠寿は携帯の写真を閉じるとメッセージアプリを立ち上げた。送るべきか、送らない方がいいのか、何度も何度も自分に問いかけ、頭の中でイメージを作って、震える手で萌美に送るメッセージを作った。『誠寿だけど、もう寝た?』これを送って、萌美から返事が来れば次を送ればいい。もし、これを送って返事が来なければもう送るのはやめよう。そう思って、思い切って送信ボタンを押した。
『誠寿だけど、もう寝た?』
 すると、すぐに返事が返ってきた。
 『まだ』
 誠寿は今度は嬉しさに手が震える。久しぶりに萌美とメッセージのやり取りをしていることが嬉しくて仕方がない。次はどうしたらいい、どんなメッセージを送ったらいい・・・?
『窓の外見て、今日は星がすごく綺麗だよ』
 『本当だ』
『ね。でしょう』
『また、メッセージ送ってもいいかな?』
 『もう、付き合ってないよ』
 誠寿はメッセージを読んで胸が締め付けられた。だが、メッセージを送れば返してくれるということは大嫌いにはなっていないということではないか? 勇気を振り絞ってメッセージの続きを送る。
『もちろん友達としてだけど』
 『ズルズルするのも良くないと思うから』
 また、胸がズキンと痛くなる。もしかしたら、もしかしたら・・・。疑問に思ったことをメッセージで送って見る。
『もしかして、他に誰か好きな人ができたの?』
 『・・・答えたくない』
『誰?』
 『答えたくない』
『何か、気に障ったのならごめん』
 メッセージが返ってこない。勇気が萎んでいく・・・。もうメッセージを出さない方が・・・。でも、ここで気持ちを伝えなかったらもう二度と勇気が出ない。ちゃんと伝えなければ、せめて自分の気持ちをちゃんと伝えなければ。メッセージを送信した。
『萌美ちゃん愛してる。もう一度付き合えないかな。俺、寂してく』
 『・・・ちょっと考えさせて』
 誠寿は夜空に吠えた。まだ、まだチャンスが残っている。ちょっと考えさせてと言ってくれた。ほんの細い細い糸だけどまだ切れずに繋がっている。
『俺、待ってる』
 誠寿がいくら待っても萌美からメッセージが返ってくることはなかった。
『おやすみ』
 返事はなかったがそれでも誠寿は満足だった。ちゃんと伝えることができた。
 ・・・萌美・・・萌美・・・萌美・・・