オナラはなんでも知っている

『僕だってバレている』英治は声がした方を見るが、そこは暗闇が広がるばかりで誰もいない。だが、そこに確かに何かがいる気配がする。暗闇の中に動く気配、輪郭が浮かび上がってきた。
 暗がりからゆかりと啓と萌美が現れた。
 萌美は半信半疑だった。ゆかりから今からここにやって来てメアリーの椅子の匂いを嗅ぐ奴が忠彦をハメた犯人だと言われた。そして待っていると英治がやって来た。英治はまるで自分たちがここにいないかのようにメアリーの椅子の匂いを嗅ぎ始めたのだった。
「あなたが忠彦君をハメたのね」萌美が信じられない顔で英治に尋ねる。「どうして、友達でしょう?」
『こいつらはどこにいた? 誰もいなかったはずだ、いったいこいつらはどこにいたんだ?』英治は混乱する頭で三人がどこから出てきたのかを考えたが、どう考えても暗闇から突如現れたようにしか見えなかった。でも、今はそんなことどうでもいい。何か言わなければ、何か・・・。
「な、なんのことだよ?」
「とぼけたってだめよ。全部わかってるんだから」ゆかりが英治を追い込んでいく。
「最初にメアリーの椅子の匂いを嗅いだのもあなただったのね」
「・・・知らないよ。だって、あれは忠彦だったじゃないか」
「違う。最初にメアリーの椅子の匂いを嗅いだのはあなた。そして、徳乃真が犯人を探し始めた時に誰か身代わりを立てないといけないと思って、陽介君を使って忠彦君を教室に誘い出した。陽介君から聞いてるの。あなたに頼まれたって」
 実際は陽介から聞いた話ではなかったが、ゆかりは英治にカマを掛けた。英治の顔がみるみる変わっていく。明らかに焦っている。
「・・・僕だって頼まれたんだよ」
「まだ、そうやってごまかそうというの?」
「本当だよ、僕も頼まれたんだ」
「それじゃ、誰に頼まれたっていうの?」
「誰にって・・・」
「あなたは誰に頼まれたの?」
「・・・それは・・・誠寿に」
「誠寿君に頼まれたの?」
「あっ、あぁ」
「本当に誠寿君に頼まれたの?」
「うん。誠寿が、僕に頼んだんだ。僕は嫌だって言ったんだけど、あいつ、忠彦君に復讐したかったんだじゃないかな、萌美を取られたから」
「英治君、」ゆかりが呆れた顔で呼びかける。
「なんだよ?」
「来てもらってて良かった。本当は証人になってもらうだけだったんだけど」