学校の正門を出てから大通りまでの300メートルはほとんどの学生が利用する道で、車二台がすれ違えるぐらいのあまり広くない道路だが、この道を使うのは学校の関係者と両脇に並ぶ家の住人ぐらいなので自動車はほとんど通らない。夕方のこの時間、学生たちは皆思い思いのグループで道に広がりおしゃべりをしながら帰っていく。女子生徒の塊や、男子生徒の塊、中にはカップルで帰っていく生徒たちもいて、あちこちでじゃれあいふざけあいながら笑い声を上げている。この道は300メートル先で交通量の多い大通りにぶつかり、生徒たちはそこで二手に分かれる。歩きや自転車で通っている地元の中学から来た学生は左に折れていき、少し遠方から来ている学生は右に折れ、駅へと向かう。
花壇の手入れをする啓のそばを通りメアリーと愛美が帰って行った。周りの生徒が否応なくメアリーに気づくと、こそこそと噂を始める。
「ねぇ、ねぇ、あれ誰?」
「すごく綺麗な人」
「一緒に帰ってるのは2年生でしょ。と言うことは2年の転校生かな?」
「誰?」
「ねぇ、誰?」
「誰?」
ざわざわした雰囲気はメアリーがいなくなるまで続いた。
その少し後ろから正門を出て行ったのは忠彦と英治と陽介と誠寿の四人だった。四人は授業が終わるといつも一緒に仲良く帰っていく、一年生の時から同じクラスで誰も部活に入っておらず、誰かが欠けることもなく誰かが加わるということもない。英治と忠彦は地元の同じ中学出身で、誠寿と陽介がちょっと離れた隣の街から通っていた。いつもは仲良く馬鹿話で笑い合って帰るのだが、この日の四人は静かだった。前を歩いているメアリーを意識していた。メアリーの事を話したいのだが、言葉を選ばないとメアリーのことが好きだと思われる。仲間内とはいえ『身の程を知らない馬鹿な奴』だと思われないようにお互いが牽制しあって話題に出せない。そんな雰囲気だった。
啓は花壇の手入れを終え部室に戻る。
この日、花壇に赤い鳥は立っていなかった。
夜、誠寿は2階の自分の部屋でベッドの布団にくるまって携帯を眺めていた。携帯には萌美の写真がたくさん保存されていて、それを一枚一枚拡大しては眺め、また拡大しては眺めていた。一月近く前、満開の桜の木の下でとった萌美が笑っている。
花壇の手入れをする啓のそばを通りメアリーと愛美が帰って行った。周りの生徒が否応なくメアリーに気づくと、こそこそと噂を始める。
「ねぇ、ねぇ、あれ誰?」
「すごく綺麗な人」
「一緒に帰ってるのは2年生でしょ。と言うことは2年の転校生かな?」
「誰?」
「ねぇ、誰?」
「誰?」
ざわざわした雰囲気はメアリーがいなくなるまで続いた。
その少し後ろから正門を出て行ったのは忠彦と英治と陽介と誠寿の四人だった。四人は授業が終わるといつも一緒に仲良く帰っていく、一年生の時から同じクラスで誰も部活に入っておらず、誰かが欠けることもなく誰かが加わるということもない。英治と忠彦は地元の同じ中学出身で、誠寿と陽介がちょっと離れた隣の街から通っていた。いつもは仲良く馬鹿話で笑い合って帰るのだが、この日の四人は静かだった。前を歩いているメアリーを意識していた。メアリーの事を話したいのだが、言葉を選ばないとメアリーのことが好きだと思われる。仲間内とはいえ『身の程を知らない馬鹿な奴』だと思われないようにお互いが牽制しあって話題に出せない。そんな雰囲気だった。
啓は花壇の手入れを終え部室に戻る。
この日、花壇に赤い鳥は立っていなかった。
夜、誠寿は2階の自分の部屋でベッドの布団にくるまって携帯を眺めていた。携帯には萌美の写真がたくさん保存されていて、それを一枚一枚拡大しては眺め、また拡大しては眺めていた。一月近く前、満開の桜の木の下でとった萌美が笑っている。