オナラはなんでも知っている

 忠彦も今まで萌美という彼女ができたことを誰にも自慢できずにいた。本当は誰かに話したくて話したくて仕方がなかった。だが、英治や誠寿や陽介というわけにはいかない。啓なら、喋ってもいいかもしれない。自慢しても許されるかもしれない。
「何?」
「誰にも言わない?」
「言わないよ」
「実はね、萌美のことなんだけど、退院したらおっぱい触らせてあげるねって言われてるんだ!」
「まじ?」
「うん」
「まじ?」
「うん」
「・・・まじかぁ」
「うん」
「それは、羨ましい」
「すごいだろ、だから、早く治したいんだ」
「そりゃ、早く治したいね」
 啓と忠彦はお互い顔を見合わせて笑った。お互いの秘密をバラし、なんとなくいけてないもの同士の波長もあい意気投合した。
「そろそろ病室に戻ろうか」忠彦が病室を離れていい時間は1時間だった。啓は車椅子を押して病室に戻ると、そこに忠彦の母親が来ていた。
「まぁ、啓君でしょう、いつもお見舞いありがとう」
「いいえ、」
「お母さん用事があるから戻るわね。それと忠彦パンフレットここに置いとくからね」と言って母親が置いたのは高校のパンフレットだった。
「これは?」
「あっ、うん。僕転校しようかと思って」忠彦は車椅子から上手にベッドに戻ると、パンフレットを手にして啓に見せた。
「ウソ」
「まだ、どうしようか迷ってるんだけど、普通に戻れる気がしないんだ」
「だって、忠彦君は悪くないじゃないか」
「それでも・・・。僕はあまり記憶がないんだけど、親がね、転校した方がいいんじゃないかって言うんだ。それはきっと、そう言うことだろうから。まだ分からないけどね」
「それって、萌美ちゃんも知ってるの?」
「うぅん、まだ話してない」
「そうか・・・」啓はなんと言ったらいいのか分からなくなり、そのまま黙ってしまった。忠彦も黙って漫画を読み始めた。啓も漫画を読み始めた。どれくらい時間が経っただろうか、何か匂ったような気がした。
『あっ!』
 あまりに普通に漫画の本を読んでいて、自分が何しにここにやってきているのか本来の目的を忘れていた。
「もしかして」
「何?」
「オナラした?」
「あはは、匂った、ごめんね」
 啓は嬉しそうな顔をして首を横に振った。あまりに薄いとうまくイメージが伝わってこない。ここは勝負所だ、がっつり嗅ぐ必要がある。啓は忠彦の布団をめくった。
「何?」