オナラはなんでも知っている

 ゆかりはびっくりした。まさかこんなにもはっきりと断られるとは思わなかったからだ。
「どうして?」
「関わり合いになりたくないもの」
「だって、さっき、」
「やっぱりヤダ」
「だからなんでよ?」
「なんとなく」
「なんとなくって何よ?」
「僕はゆかりさんのために誰かのオナラを嗅ぐのならいいと思ったけど、それ以外の人のためにオナラを嗅ぐのは嫌だ」
「じゃあ私のためにお願い」
「だって、ゆかりさんのためじゃないもん」
『こいつは、捻くれ者だ。友達もいなくて一人でオナラを嗅いでお金をもらっているうちに捻くれ者になってしまったんだ』そう思い、こんな捻くれ者に協力してもらうためには何か、何か大きな餌を用意した方がいい。何か大きな、こいつが飛びつくような大きな餌・・・。ゆかりはひとつ思いついた。こんな捻くれ者で、変態で、友達がいなくて、当然彼女もいないような奴が飛びつく餌・・・自分で思いついた考えに悪寒が走る。でも、他に思いつかない。
『こうなったらもう仕方がない、これでどうだ、餌に食いつけ!』
「あなた、おっぱい見たくない?」
「えっ!」
「おっぱい」
「ブラは?」
「えっ! なし」
「うそ」あからさまに啓が食いついてきた。こんなにもおっぱいに反応するとは思わなかった。
「嘘じゃない」
「乳首も?」
 啓の目が爛々と輝き始めた。ゆかりの全身の産毛がゾワッと逆立つ。「もちろん」あまりのことに声が裏返った。
「・・・嘘だ」
「嘘だと思うのならいいわよ」やっぱりやめだ。啓が嘘だと言ってくれた言葉に乗っかろう。やっぱりやめよう。こんな駆け引きはあまりにも武が悪い。
「だったらオナラを嗅がせてよ。そしたら本当かどうかわかるんだから」
「あんた馬鹿じゃないの、女子はオナラなんかしないのよ!」
「嘘つけ」
「あたしはしないの」
「・・・。僕の能力だけ使おうとしてるんだろう」
「だったらもういいわよ、あんたみたいな変態には頼まない」
「わかった、わかった手伝うよ」
『えっ、何、何を言ってるの、もうやめた話なのよ。今更手伝うなんて言わないでよ』
「その代わり、その・・・」
「いや、やっぱりもういい、やめましょう。あなたには手伝ってもらわなくても・・・」
「やる、やるよ、やるから、やるからちゃんと事件が解決したら見せてね。絶対だよ、約束だからね」