オナラはなんでも知っている

「わかってくれて嬉しいよ。初めてなんだ僕の力のことわかってくれた人・・・。じゃあ僕帰る」
「あのね、啓君」
「言わないよ、ゆかりさんのこと誰にも」
「ありがとう」
「それじゃ。あっ、それと、椅子の匂い嗅いでいたの僕じゃなかったでしょう」
 そうだった。ゆかりは最初は啓を疑っていたのだと思い出した。
「そうね・・・」
 啓は少なくともゆかりが自分の力を否定しなかったことが嬉しかった。しかもゆかりも変な力を持っていた。変な力を持っているのが自分だけじゃないこともわかったし、自分のことも信じてもらえた。初めて仲間を見つけたような気になった。しかもそれは女子で、もっと言えば、自分のタイプでもある可愛い女子だった。
 一方のゆかりは、『やっぱり変態な気がする。安易に自分の力を見せて良かったのだろうか・・・』と、心の拒絶はまだ続いていた。

5月2日 月曜日
 三連休の休みの後、ゆかりは学校に登校すると早速啓を探した。啓はすでに登校していて自分の席に座っていた。こうやって観察しても啓は普通の高校生で、というよりも地味で目立たない特徴のない生徒だった。
 あの日、啓の話があまりにもショッキングだったため一度冷静になりたくて詳しいことは聞かなかった。そして家の中に入ると弟の亮平に「さっきのお兄さんにどこかで会ったことがあったの?」と確認したのだった。だが、弟は会ったことはないと言うし、父親に会いたいと他人に言ったこともなかった。
『だがオナラを嗅いで相手の気持ちがわかるなんて、そんなことがあるのだろうか?』どう考えてもにわかには信じられない。でも、自分の影を出せる力だって他の人からすれば信じられない力だ。だったら啓の言うことも本当かもしれない。何しろ弟の気持ちを言い当てたのだ。忠彦が徳乃真からあんな目に遭わされた真相を探るためには啓を信じて仲間になってもらった方がいい。きっと役に立つ。これは三連休の休みの間冷静に考えて出した結論だった。昼休みなるとゆかりは啓に声をかけた。
「啓くんちょっといい」
「うん」
 声をかけられた啓がゆかりを見てにっこり笑った。ゆかりはゾクッとして鳥肌がたった。ダメだ、一度嫌悪感を味わってしまったのでまだ体が反応してしまう。