オナラはなんでも知っている

「お願いだから信じてよ。オナラを嗅がせてくれたらすぐにわかるんだ。なんでも言い当てることができるからさぁ。こんなこと誰にも言えることじゃないんだ。ゆかりさんならわかってくれるだろう。信じられないのはわかるけど、少しだけオナラを嗅がせてよ。そしたら絶対に言い当てるからさぁ」
 そしてまた啓が必死になればなるほど、オナラを嗅がせてくれと鬼気迫る顔で訴えれば訴えるほどゆかりは啓を気持ち悪く思う。『これは、変態中の変態だ。これ以上追い詰めたら、マズイ』
「オナラは今出ないの」
「少しでいいんだ。ほんの少しで」
「本当よ、嗅がせてあげたいけど」
「少しでいいんだ。僕が近づけば、その少しのオナラで君のことがわかるから」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい。少しも出ないの」
「出るまで待つよ。出たらきっと僕の言っていることが本当だってわかるから」
「そんなに待てないの、夕飯も作らないといけないし」
「大丈夫、人って思ったよりオナラをするんだよ」
「私、オナラはしないの」
「僕をバカにするのもいい加減にしろよ!」啓はなんとか理由をつけて自分から逃げようとするゆかりについに腹を立てた。
『最悪だ。変態を怒らせてしまった!』
「オナラをしない人間なんていないんだ。みんなオナラをして、自分の本心を出してるんだ」
『もう無理』ゆかりは生理的に話を聞くことができなくなった。体が啓を拒絶して鳥肌が立つ。とっととドアを開けて家の中に入るべきだ。こんなやつ無視するに越したことはない。その時。
「姉ちゃんただいま」と言って弟の亮平が帰ってきた。近所の友達の家でも行っていたらしい。
「何してるの?」と、姉と知らない男の人が話しているのを見ていた。するとここで奇跡が起こった。

「ブッ!」

 亮平がオナラをしたのだ。「オナラ出た。へへへ」
「何、今オナラしたの?」啓がその音を聞きつけて、亮平のお尻の近くに顔を近づけた。ゆかりは慌てて亮平を抱き寄せる。
『スッー!』啓が漂う空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「この人何してるの?」
「ダメ、刺激したらダメ」ゆかりは亮平が啓を刺激しないように注意する。だが、啓はそんなこと関係ないと言わんばかりに亮平のオナラを胸いっぱい吸い込んで、味わっていた。
「これで、君の弟の気持ちがわかる」
「何言ってるのこの人?」