表情が消え、思考が停止する。
「星羅⁉︎星羅‼︎」
 遠くでわたしを呼ぶ声が聞こえた。でも、声が出ない。
「星羅‼︎」
 大声と共に頬を叩かれた。
「たけ、もりくん……」 
 痛みで我に返る。
 ぼやけていた視界も晴れ、思考も再開出来た。声も出るし、表情筋も働いてくれる。
「お前らさあ、星羅に謝れよ」
 直後、獣の唸り声のような低い声が、前から聞こえた。いつの間にか金髪のギャルから身を守られるように、彼の背後にいる。という事は、この声は、
「竹森くん……?」
「はあ?なんで?なんであんなクソに謝んないといけねぇんだよ」
「うるせぇよ。黙れや茶髪。謝れっつってんだよ」
「いーやーでーす!第一かんけーねーお前にだけは言われたくねぇし!」
 いきなり口論が始まってしまった。
「お前らさあ、そうゆう悪口で傷つく人がどんだけいんのか分かってんのか?星羅はな、辛くて苦しくて悔しい思いしてここまで生きてきたんだよ!さっきだって悪口で傷ついて我を忘れてたんだよ!そんぐらい辛いってことが、お前らは分かってんのか!」
「知るかボケ!何もしらねぇ癖に大口叩いてんじゃねぇよ!死ねやジジイ!」
「やめてっ‼︎」
 わたしは、気が付いたら二人のギャルに向かって怒鳴っていた。
 知り合ったばかりのわたしなんかを庇って怒ってくれた彼。わたしはいいけれど、彼に死ねなんて許せなくて。チラッと見えた黒い瞳が切なげに、悲しげに揺れていて。気が付いたら怒鳴っていた。
「は……?てめぇ、調子乗んのもいい加減にしろや」