「うん、辛かったね、悔しかったね、よく頑張ったね」
 彼は、わたしの雑な説明に優しく相槌を打ってくれ、抱き締める力を強める。そんな些細な行動にも涙が溢れた。
 胸にずっと溜め込んでいたモヤが晴れ、少しスッキリする。
 涙も枯れて、彼に「ありがとう」と告げたとき。
「あれ?あっれれぇ?アイツ、陰キャ女じゃね?男と抱き合ってマジキモいんだが」
 もうホームルームが終わったのだろうか。鞄を持った金髪のギャルが、わたしに聞こえるように嫌味ったらしく言う。
「いやマジそれな。さっさと帰れよ。目障りなんだけど。あたしらの言うこと、聞いてくれるよねぇ?」
 隣に居た茶髪ギャルが同意し、わたしに鋭い視線を向けた。
 ……そうだ。わたしはこの視線が何よりも怖かったんだ。
 教室の出来事を思い出し、全身に鳥肌が立つ。顔が強張るのを感じた。
「おいおい、なんか言えよブス」
 わたしが黙っていることが気に入らなかったのか、さっきより低い声で金髪ギャルが言った。
 わたしは、彼の背中に爪を立てる程しがみ付く。
 そうしていたら、彼がわたしの肩を掴んで思いっきり引き剥がした。
 ああ、わたしは彼にも嫌われたんだ。ずっと抱き付いているわたしが鬱陶しかったんだ。不意に、そう思った。
 彼にも愛想を尽かされるなんて、わたしはどれだけ馬鹿で阿呆で生きる意味がないんだろう。わたしを理解してくれる人なんて、そんなにいないのに。
 ——なんかもう、どうでもいいや。もう死にたい。