「しょうくん!」
 しょうくんは、もうすぐ亡くなってしまう、そんな状況だった。
 昨日までは元気だったのに。
 しょうくんの家族も、静かに涙している。
 わたしは手を握り、ベッドに横たわる彼に呼びかけた。
「嫌だ!しょうくん!これ!読んで!」
 わたしが差し出した一枚の紙を受け取り、しょうくんはゆっくり読み出した。

 しょうくんへ
 わたしと君が出逢ったのは、いつだっけ。
 でも、ずっと好きだった。
 初恋の感情を忘れていたわたしを助けてくれて、ありがとう。大好きだよ。あなたの優しさも、強さも弱さも。愛してる。
                星羅より

「僕も、大好き。ありがとう、星羅」
 そう言って、わたしの手を握り返してから、静かに人生の幕を閉ざした。

 葬儀は、速やかに終わった。わたしは参加しなかった。哀しくて、行く気にならなかったから。
 でも。君が願った通り、もう強くなるよ。

 *

 窓の外から、桜の花びらが飛んできた。
 ねぇしょうくん。淋しい。逢いたい。
 でも、もう叶わないね。
 わたしはいっぱい泣いたよ。でも、大分前、わたしに強くなれって言ったよね。その通り、強くなるよ。
 もう卒業式だね。君が願った通り、弱い自分は、卒業する。
 だから。
 ずっと待ってて。
 わたしは青い空に微笑んだ。