その日から十三年。翔介くんはわたしのことを覚えていたんだ。初恋の人に気づかなかったなんて、わたしなんて最低なんだ。
全てを思い出し、走り出した。
「いってらっしゃい!」
さっちゃんの言葉を背中に受けながら、地を蹴り飛ばして走る。
先生から病院は聞いていた。
『桜ノ宮病院』
この辺で一番大きな病院で、わたしと翔介くんが入院していたところだ。
さっちゃんに、遅刻させてごめん、と謝りながら、先生に聞いた病室へ向かう。
『310 竹森 翔介』
番号を確認し、扉を開いた。
「あ、坂野さん?」
水色のカーテンの中から、くぐもった声が聞こえる。
「坂野さん、星羅が来ても絶対言わないでくださいね……忘れたんですか?僕がもうすぐ星羅を振ろうとしてることを」
「嫌だ!」
反射的に叫んだ。別れたくなかったから。
「え、星羅?ちょっと待って、今の話は——」
「嫌だ!」
カーテンを開けると、困ったように微笑む翔介くんがいた。
全てを思い出し、走り出した。
「いってらっしゃい!」
さっちゃんの言葉を背中に受けながら、地を蹴り飛ばして走る。
先生から病院は聞いていた。
『桜ノ宮病院』
この辺で一番大きな病院で、わたしと翔介くんが入院していたところだ。
さっちゃんに、遅刻させてごめん、と謝りながら、先生に聞いた病室へ向かう。
『310 竹森 翔介』
番号を確認し、扉を開いた。
「あ、坂野さん?」
水色のカーテンの中から、くぐもった声が聞こえる。
「坂野さん、星羅が来ても絶対言わないでくださいね……忘れたんですか?僕がもうすぐ星羅を振ろうとしてることを」
「嫌だ!」
反射的に叫んだ。別れたくなかったから。
「え、星羅?ちょっと待って、今の話は——」
「嫌だ!」
カーテンを開けると、困ったように微笑む翔介くんがいた。