「ありがとう、さっちゃん」
「いえいえ!……あ。待って星羅!いっこ言ってなかったことがある!」
「なに?」
「あのさ、竹森翔介って、星羅が昔入院してた病院の隣のベットの子だよ!名前一緒だし!」
 え、と細く開いた口から溢れ落ちた。
 ずっと逢いたかった男の子が、翔介くんだなんて。信じられない。
 わたしと男の子——翔介くんが出逢ったのは、今から十三年前にまで遡る。

 *

 わたしは、もともと身体が弱く、入退院を繰り返していた。
 その日も入院することになり、憂いが身体に纏わりついていた。
 そんなときだ。彼に、翔介くんに出逢ったのは。
「うおー!トリケラトプス、行けー!うわあ!ティラノサウルスがきたぞ!ガーン!ぶつかった!」
 わたしは、朝眠っていると、恐竜の名前を連呼してフィギュアを動かす音で目が覚めた。
「うるさ」
「え?」
 思わず呟くと、案外大きな声だったのか男の子が振り向いた。
 頭の上に『13年』と浮かんでいる。
 なんでカーテンを開けながら遊ぶんだろう。なんで朝から大声を出すのだろう。