「ショック受けてやがんの、ガチウケんだけどぉ〜!」
 甘ったるい声がわたしを突き刺す。
 今までも何度か陰口を叩かれていた。それは慣れていたからまだ良かったけど、でも、こんなに酷いのは初めてだ。
 膝に力が入らなくて、崩れ落ちてしまいそう。既に脚が震えている。
「俯いてわたしは違います、的な雰囲気だしてんじゃねぇよ。いっつも通夜みてぇな顔してよぉ。陰キャがしゃしゃんなよ、クズ。あとさぁ、小説家になるとかガチで草。お前なんか無理だろ、ババア」
「っ……!ごっ、めんなさ……!」
「泣けば許してもらえるとか思ってんじゃねぇ!」
 涙でぐしゃぐしゃだろうわたしの顔を覗き込みながら不気味に笑う高木くん。
 周りも、嘲笑う。
 怖くて怖くて耳を塞ぎたいのを必死に堪えた。でも、もう精神的にも肉体的にも限界だった。
 くるりと入口の方を向き、鞄を持ったまま思いっ切り走った。
 逃げんのかっていう声がしたけど、無視して走る。
 怖くて怖くて、嗚咽が洩れそうで。