頭をガンッと殴られた気がした。ショックで声が出ない。
「っ!そんなに大変な状況だったの?なんで言ってくれなかったの!わたし、連れ回したりしちゃったじゃん!ねぇ、休まなくて大丈夫なの?」
 やっと声が出たのは、数十秒経った後だった。
「大丈夫だって!連れ回したりもしてないよ」
 翔介くんが、あはは、と、笑いを溢す。
「星羅、僕が言いたいのはもう一つあってね、それは——」
 言葉が途中で途切れた。その代わりに響いたのは、彼の、荒い息遣いだった。
「はっ、はっ、苦しっ、はっ、あぁ……」
「いやあ!翔介くんっ!嫌だ!死んじゃだめ!」
 心臓部を抑えて呻く、翔介くん。あの日の光景が重なった。
「はっ、死な、ないよ、はっ、はっ……」
「先生呼んでくるから!」
 そう残して飛び出した。
 涙なんか出なかった。ただ必死で必死で。
「先生!助けてください!翔介くんが……!翔介くんが!」
 『翔介くん』という単語を出した途端、先生たちが目の色を変えて駆け寄って来た。
「竹森がどうした⁉︎」
「翔介くん、心臓抑えて蹲って、それで……!」
「場所は何処だ⁉︎」
「こっちです!」