後から知ったことだが、翔介くんにはファンが沢山いるらしい。たまに女子にナイフのような視線を向けられる。
「星羅!」
 弾んだ声で自分の名前を呼ばれ、ハッと我に返った。
「翔介くん!どうしたの?」
「星羅に会いたくて来ちゃった」
「っ……!馬鹿!人もいるのに……!」
「別に良くない?僕たちが付き合ってるなんて、みんな知ってるでしょ?」
「そーゆー問題じゃないっ!」
 わたしはまた拳骨を落とす。
「っていうのは冗談で、大事な話があって来たんだ。着いて来て」
「うん?」
 翔介くんは、人の波をかき分けて進む。わたしもそれに続いた。
 翔介くんはどんどん進み、旧校舎——北校舎へ入っていく。
「話って、なに?」
「ああ、うん、それなんだけどね」
 振り返った時に見えた頭の上の数字は、『42日』だった。
「僕、入院することになったんだ。少し離れちゃうけど、戻って来るから待ってて」