隣から興奮したような声が聞こえてきた。
 そういえば、この観覧車には、『カップルが頂上でキスをすると永遠に結ばれる』という噂がある。そう考えて我に返った。勝手に妄想した自分が恥ずかしい。
「星羅」
「ん……⁉︎」
 振り向いた途端、唇に温かいものが当たった。驚いて身体が硬直する。
 温かいものは一度離れ、もう一度、今度は長く当たってきた。
 数秒考える。考えた後、この温かいものが翔介くんの唇だと理解した。
「ちょっと⁉︎」
 真っ赤になって肩を掴んで引き剥がし、翔介くんを問いただした。
「何、急に⁉︎」
「噂、僕でもできるのかなって思って」
 理由を聞いて納得した。彼にもう長い未来はないから、微かな希望でもやってみたいんだ。