こんなところで蹲っている暇はない。
　わたしは立ち上がり、出口に向かって走り出した。
　竹森くんは、三年五組と言っていた。
　階段を駆け上がり、廊下を走る。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
　前を見ると、「三年五組」と書かれたプレートが見えてきた。
　一気にギアを上げ、猛スピードで走る。
　音を立てて扉を開けた。
「竹森くんっ！」
　大量の視線がわたしに集まった。恐い、と一瞬感じたが、気にせずもう一度呼んだ。
「竹森くん！竹森くん！」
「あー、えと、キミ？竹森なら、さっき倒れて保健室行ったよ？あ、ちょ、キミ⁉︎」
　親切に教えてくれた男子生徒にお礼も言わず、走り出した。
　息はもう、酸欠に近い。
　視界がぼやけ、足元がおぼつかなくなってきた。
　わたしの身体、あと、少しだから、倒れないで。
「っはあっ、たけっ、もりくっ……！」
　息も切れ切れにそう呟き、歩を緩めずに走る。