「嫌だよっ……!竹森くん!」
 呼んでも届かない言葉だけが宙に溶ける。
 竹森くん!行かないで!嫌だよっ!
 言いたいことがいっぱいあるのに、喉に力が入らない。代わりに出てきたのは、短い嗚咽だった。
「っく、っ……!竹森くんっ……!いかっ、ないでよっ……!」
「あはははははっ!かわいそーな星羅チャン」
「それなー!抱き合って泣いてるとかうけすぎんたけどー!」
 え……?高木くんと、沙由里さん……?なんで……?
「ついてきてよかったー!いいもん見れたわー」
 その無責任な声と、苛つく言葉に怒りが爆発した。
 俯いていた顔を上げる。二人の頭の上に、百に近い数字が浮かんでいる。そのことに、八つ当たりだと分かっているけれど苛ついた。
「……せえ」
「はあ?聞っこえなーい」
「うるせえって言ったんだよ!」
 わたしの怒鳴り声と剣幕に押されたのか、二人が、一歩下がった。
「陰キャが調子乗ってんじゃねえよ!」
 わたしは、高木くん、いや、高木を睨め付け、ひとこと言ってやった。
「調子乗ってんのはどっちだろー?お前らの方じゃね?クラスで目立っときゃいいってか?あはは!馬鹿じゃねえの?」
 自分でも驚く程、スラスラと言葉が出てくる。もう二人なんて恐くない。
「おいてめぇ……!」