「後ろ?」
 くるりと振り向くと、茶髪ギャルがわたしの頭目掛けて鞄を振り上げていた。
「きゃあ!」
 わたしは咄嗟に身を引いて避ける。
 あの鞄、妙に重そうで分厚かった。わたしに当てる為だけに、教科書類を詰め込んだのだろうか。今更背筋に凍るような寒気が走った。
 茶髪ギャルは舌打ちをして、苛立たしげに暴言を吐く。
「チッ。最悪。避けんなよ。その馬鹿な脳味噌を直してあげようと思ったのに!あたしの親切心裏切りやがって!このクソババア!マジで死ねよ!」
「だっ、まれよ!クソは、てめぇだろうが!せっ、らに、謝れ!はっ……」
「竹森くん!話しちゃだめ!わたしは大丈夫だから!」
 わたしは彼の手を握って宥める。
「チッ。もう引こーぜ」