金髪ギャルがわたしの方へ歩いて来る。拳を握り、鞄を捨てて、ついに走り出した。
 わたしは怖くて瞼をきつく閉じる。
「てめぇ、マジでぶっ殺す!」
「星羅っ‼︎」
 ゴッ!と鈍い音がした。痛みは無い。不思議に思って力を込めていた瞼を持ち上げると、目の前の光景に思わず絶句してしまった。
 ——彼が、倒れていた。
「竹森くん?竹森くん!」
 顔を見ないようにしながら彼に駆け寄り、身体を何度も揺さ振る。
「うっ、はっ、はっ、ぐっ……」
 心臓部を抑え、苦しそうに呻く彼。
 嫌な予感が、身体を突き抜けた。
 これは、やばいかも。
 嫌な予感は、余命が近いと感じるもの。経験上わかった事だ。
 ということは、彼はっ……!
「は、はあ?ちょっと心臓んとこ殴っただけでしょ?なに苦しがってんだよ?冗談もいい加減にしろよ」
 ギャルが少し動揺したように、荒々しく吐き捨てる。
「はっ、はっ、せっ、ら……、うしっ、ろ!はっ……」
 彼が、うっすら目を開き、力を振り絞ってわたしに呼び掛けた。