騒動の余波でざわめく校内。
その喧騒を避けるように、二人は旧校舎の裏庭へ向かった。
「遅くなって悪かった。思ってたより位置が掴みづらかった……改良しないとだな」
よくわからないなりに、ブレスレットに何か仕掛けがあったのだろうと紗里も察していた。
「お守りって言ってたけど、なんなの?」
「俺の力を込めてるから、だいたいの場所を辿れる。それに、ある程度力が強いやつなら俺の気配に気づくから、牽制になると思ってたんだが……馬鹿の馬鹿さを舐めてた。……ごめん」
彼には珍しくしゅんとした様子で謝られ、紗里はううんと首を横に振る。
「来てくれて助かった。助けてくれてありがとう。本当に……」
また少し震える紗里を、悠永はなだめるように優しく撫でる。
「言われっぱなしもやられっぱなしも嫌になって、後先考えずにカッとなって……大神先輩が来てくれなかったら、死ぬところだった。馬鹿みたい、私」
「紗里は悪くない。それに、俺は大したことしてねぇよ。多勢に無勢、おまけにあやかしと零力のおまえなのに、一歩も引かずにやりあって頑張ったな。結構迫力あったぞ。子狼くらいに」
「ふふ、何それ」
笑ったことでようやく極度の緊張から脱することができて、紗里はベンチに深くもたれた。