「大神先輩……」
小刻みに震える紗里をそっと抱き寄せた悠永は、同級生たちに黄金が混じり始めた目を向けた。
「何をしているのかと、俺は聞いた。聞こえなかったのか?」
「わ、わたくしたちは……その女がみっともなく貴方様に酔い迫るにあきたらず、ものまで盗んだようだったので咎めただけで……」
「みっともなく俺に酔う? 紗里が?」
嘲るように笑った悠永の目は、完全に黄金に染まっていた。装飾具などでは抑えきれない力が周囲を包み、鬼塚をはじめとする三年生たちは、震えながらうずくまる。
紗里には何が起きているのかよくわからなかったが、悠永の怒り具合はわかり、なんだかこのままではいけない気がして、彼の頬へとそっと手をのばした。
ぴくりと反応した悠永は、軽く息をつくと、灰色混じりになった目で紗里を見下ろす。
「ありがとな。ちょっとここでじっとしてろ」
「……うん」
少し怒りが鎮まったらしい悠永に少しほっとして、小さくうなずく。
彼はへたり込んだ鬼塚に近づき、意図的に目に力を込め、視線を合わせた。
「あ……」
口を半開きにした彼女は、まさしく酩酊している様子で、強い力に当てられるとああなってしまうのだと嫌でもわかる。
「この間のは、お前の仕業か」
「この、あいだ……」
「俺に毒を盛っただろう」
「毒だなんて、そんな……わたくしは、ただ……あなたさまに抱いてほしくて……」
「はっ、抱いてほしくてだと? 酔い迫ってきてるのは、紗里じゃなくてお前だろうが」
確認が取れたことで用済みになったのか、悠永はすっかり力を引っ込めて、紗里の方へと戻った。
と、何やら慌ただしい足音や声が近づいてくる。現れたのは校長を筆頭にした教師陣で、どうやら、騒動を察知して急ぎ駆けつけたらしかった。
悠永が事の次第を話し、紗里を呼び出した三年生たちはまとめて処罰を受けることに。
さらに鬼塚については、一般生徒への妖術使用と悠永への禁忌薬使用によって、校長権限で即刻退学処分が決定した。