悠永のものと聞いて一つだけ心当たりがあることに気づき、紗里はつい、左腕をぴくりと動かしてしまう。
それを見逃さず、取り巻きが紗里の腕を掴んで、制服の袖を強い力で引っ張った。
悠永から渡されたブレスレットがあらわになり、三年生の男女が気色ばむ。
「ありました!」
「やっぱりね。……零力が彼に近づくなんておこがましい」
リーダー格の女子が近づいてきて、紗里を睨めつける。
「あなた……おおかた、図々しくも近づいて、大神さまのお力に当てられて迫ったんでしょう? それで断られて盗んだってところね。ああ、汚らわしい」
言うや否や、パシッと乾いた音が響き、紗里の視界は一瞬白くなった。
平手打ちされたのだとわかったのは、頬がじんと熱を帯び、一瞬遅れて痛みだしてからだ。
「あらやだ。わたくしの手が汚れてしまったわ」
わざとらしく手を振った彼女に、取り巻きがハンカチを差し出す。
クスクスと笑いが広がり、頬はじくじくと痛み……紗里の中で、何かが爆発した。
「……あなたたちにそんなことを言われる理由なんて、私には何一つない!」
突然叫びだした紗里に、彼らは一瞬驚いた様子だったが、すぐにせせら笑いを浮かべる。
紗里は負けまいと、手のひらに爪が食い込むほどに拳を握り、彼らを睨んだ。
「私は……普通に試験を受けて、ちゃんと合格してここにいます。なのになんで霊力がなかったかなんて、私が一番知りたい! 霊力がなくても、私はあなたたちが言うみたいに、当てられて迫るとか、そんなことしてない! あなたたちとは違って、恥じるようなことは何一つしてません! 大神先輩のものも盗んだりしてない! これはただ、もらっただけです!」