様々な色が渦を巻いているように感じ、目眩がする。吐き気をもよおしかけた時、世界が元に戻った。見覚えのある座敷に、目を瞬かせる。

「何、今の……」

 驚く私に、炎華は、

「瞬間移動した。屋敷に戻ってきたから、安心しろ」

 と、答えた。

「それは鬼の力?」

「そうだな」

 なるほど。だから、炎華は真継様の屋敷に現れたんだ。
 そう問うと、炎華はばつが悪そうに頭をかいた。

「いや、実は、屋敷に入るのに手こずっていた。あの屋敷は、魔除けの呪が複雑に張り巡らされていたし、それを破るのに時間がかかった。早く助けに行ってやれずに、悪かった」

「そうだったの……。でも、どうして、私が屋敷にいることを知っていたの?」

「先に小花と咲を見つけたんだ。千代が来ていると聞いて、心臓が止まるかと思ったぞ」

「そうだ、小花と咲! 二人は無事なの?」

「無事だ。咲はすぐに母親のところへ連れて行った」

「良かった……」

 私は心からほっとした。鵺も娘が戻ってきて、安心したことだろう。

「ねえ、炎華、色々と聞きたいことがあるのだけど……その前に、下ろしてくれないかな……」

 炎華に抱かれていることを思い出し、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。炎華の腕の中で身じろぎをしたら、

「こら、動くな。危ない」

 炎華はますます私の体を強く抱いた。

「話ならこのまましよう」

 私を離すことなく、炎華は腰を下ろした。膝の上に私を座らせ、肩を抱く。
 こ、この体勢……恥ずかしい……。
 心臓がどくどくと脈を打っている。こんなに密着していては、炎華に気付かれてしまうかもしれない。

「さて、何が聞きたいんだ?」

 私が動揺していることに気付いているのか、炎華が面白そうに目を細めた。