鵺の看病をするという小花を残し、私と炎華は鵺の部屋を後にした。
 廊下を歩く炎華について行きながら、私は、

「炎華、さっきの鵺の話はどういうこと?」

 と、問いかけた。

「鵺の言った通りだ。以前より、時雨真継の一味は、あやかしの子供を攫っている」

「まさか! 攫ってどうするっていうのよ?」

「いたぶって殺しているのではないか?」

「確かに、陰陽師はあやかしを退治するのを使命としているけれど、いたぶって殺すなんて、そんな非人道的なこと、しないわ!」

 否定をする私に、炎華は冷たい視線を向けた。

「お前はまだ、真継を信じるのか」

「信じるも何も、真継様は天涯孤独になった私を引き取って育ててくれた恩人で、親のような人なのよ」

 優しいあの人が、そのようなことをするはずがない。
 炎華はかたくなに否定する私を見て、溜め息をついた。

「お前は騙されているんだ」

「嘘よ! ――私、真継様に確かめに行くわ!」

 背中を向けて駆け出そうとした私の腕を、炎華が掴んだ。

「離して!」

「行かせるわけにはいかない」

 私の額を、炎華が人差し指で突いた。その瞬間、目の前が暗転し、私は意識を失った。