オーシャンに来て次の日だ。
相変わらずアオは早起きで、台所で朝食を作ってた。
昨日、台所の使い方教えたら、直ぐに使いこなし夕食を難なく作った。

「ん…おはよう」
「おはようセラ!遅かったね」
「ちょっと、修行の内容を考えて遅くなった。それにしても凄い…いい匂いがする」

俺は眠気眼でアオを後ろから抱きしめる。
アオの温もりを感じながら。
 
「ちょ、セラ!?」
「んー…」

温かい…。
俺達シーラカンス族は、もとは暖かい地域の種族の為、アトランティスの朝の寒さには弱く、眠気が襲いかかってくる。
それにだ、陸と違ってオーシャンは四季はなく、海域によっては朝と昼と夜の寒暖差が激しい。

「だらしない!こら!セラ!」
「……仕方ない…俺は寒いの苦手なんだ、1番アオが分かるだろ」
「そうだけど…抱きつかれたままだと作れないから、どいて」

じたばたするアオをみると、これ以上邪魔をすると本当に拳が飛んでかねないので、渋々とどく事にした。

「で、何を作ってるんだ?」
「海鳥の卵が卵があったじゃん?それに、牛乳に近いのもあったし…もちろんパンの代わりも!代わりで作ってるけど、フレンチトースト」
「フレンチトースト?なんだそれ…」
「とりあえず、座って!今持ってくるから!」

食卓の椅子に座ると、アオがフレンチトーストと言うのを持ってきた。
食卓にそれを置かれた瞬間、焼きたての甘い匂いが鼻に入る。
フレンチトーストだけではなく、食べたことのない料理が並んでいた。

「フレンチトーストと海藻サラダとおばさんから貰ったリンゴの蜂蜜かけ!」
「…朝からここまでの料理初めて食べるんだが」
「セラは普段料理しなかっただろ?台所見たらわかるよ…新品同様に綺麗だけど、台所の周りは汚かった」

アオにそう言われ辺りを見渡すと、確かに綺麗に清掃されている。

「全部お前がやったのか?」
「まぁねー!家事は慣れっこだし、しばらく住むなら綺麗にしたいじゃん!」
「……」
「セラ?」
「……」
「掃除しちゃいけなかった?」
「いや、寧ろ感謝してる…ありがとう」
「…へへ、うん!あ、ほらフレンチトースト食べな!冷えちゃうから!」

アオに言われ、フレンチトーストと言うのをフォークで刺し口に運ぶ。

「!?!?!?」

なんだこのフワフワで甘くてとろけるような食感は!
そして、サラダも一緒に食べると更に美味い。
やはり、アオが作る料理はかなり美味い。
眠気眼だったのが、アオの料理の美味さで覚醒した。

「美味い?」
「美味い…甘くていい」
「そっか!今日から修行だもん!美味い料理食べて頑張ろ!」

アオも一緒にフレンチトーストを食べる。
今まで1人で朝食を簡単に済ませてたのに、こうしてアオと朝食を毎日とるとなると、一日の始まりが最高な感じがした。
それはそうだ、大切な人とこうやって食卓で食べるなんて…140年ぶりだ。

「そうだな、俺も手は抜かない」