少し前の事。

アトランティスは2つの顔があり、1つは活気溢れ観光地みたいな街で、もう1つは天海軍の目を盗み、麻薬や人身売買、違法武器販売など表では絶対に出せない商売をしてる街、闇の街がある。
闇街の場所は知る者しか知らなく、そう簡単には行けない。
そんな闇街をリヴィアタンを含め、闇に生きる者は知っており、定期的に来ては、情報や必要な物を揃える為にリゲリィアの元へ通っていた。

「あらあら、久しぶりじゃないリヴィアタン」

赤髪を揺らし、妖艶に笑いながらも、懐かしむ様子をするリゲリィア。
リゲリィアとリヴィアタンは元7天戦士であり、リヴィアタンの数少ない友人。
 
「……」
「アナタの事はアキラちゃんから聞いてるわ」
「なら、話が早い。そろそろあの作戦を実行する。メガロドンにも話はつけている」
「アオちゃんにはこのことは?」
「話してはいない」
「でしょうね、まさか自分の目の前で病気で死んだ母親が実はダミーで、神にすり替えられたなんて聞いたら、ショックじゃすまないわ。それに、あの小魚ちゃんにもちょっと痛い目に合うですもの」
「アイツならそう簡単には死なん。俺の弟子だからな。だが、あそこで負けたらそこまでって事だ」
「あらあら、義理息子には厳しいのね」

海藻煙草を吸いながら一息つき、棚から皮袋をいくつかと大きめ木箱をカウンターに置いた。

「まぁ、戦いに明け暮れた貴方らしいとは貴方らしい。それに、昔からそうだけど、貴方って本当に人使いが荒いんだから…。コレを揃えるのに苦労したんだから、感謝しなさいね」
「そう言いながら、楽しめたんだろ?それに、これはお前でしか集めれないからな」
「久しぶりの運動にはなったからね」
 
中身を確認するために、木箱の方をゆっくり開けた。
木箱の中に入ってたのは、装備一式だった。
しかもその装備はリヴィアタンがかつて7天の戦士の時に身につけていたものだ。
リヴィアタンが戦士を辞める際に、魔界のとある場所に隠しておいたのだ。

「懐かしいものだな。こうやってコイツに再び会うなんて」
「見た目は変わってはいないけど、今の貴方が戦いやすいように、改良しておいたわよ」
「そうか」

装備を護服の上から慣れた手つきで着けていく。

「……久しぶりだなこの感じ」
「20年以上ぶりじゃないかしら、その姿みたのは。ホタルちゃんみたらびっくりするわね」 
「アイツの前では戦う事はしなかったからな。…リゲリィアお前に頼みがある、もしもオレに何かあれば、アオの事を頼みたい」
「ふっ、似合わない事を言わないでよ。貴方が言わなくても私はあの子を守るわ、あの子はホタルちゃんの娘だもの」
「ふっ、お前らしいな。アキラにもよろしく頼む」
「もちろん」

荷物持ち、リゲリィアの店を後にした。

「さて、カオルちゃんいるんでしょ」
「いると言うか、今帰ってきた」
「でも、話を聞いたんでしょ?」
「まぁね」
「私達も準備しましょカオルちゃん。可愛い可愛い小魚ちゃんが大きなサメさんに粉砕される前に」
「そうだね」

リゲリィアとアキラはリヴィアタンに言われた通り、直ぐに作戦に取り掛かった。

そして今。

俺は師匠よりも先に魔界へと向かっていた。
天海軍の目を盗み、アトランティスの国境付近に着いた。

「はぁはぁ…」

足を止めずに、ひたすら走り続けたおかげで、息が上がってる。
それもそうだ、アトランティスは国境を沿ってからの周囲は約150km。
俺の住処から国境までは50km以上あり、それを止まらずに走ってきたら、俺でも息があがる。

「…師匠は大丈夫か?師匠でも今のイッカクだと、そう簡単にはいかないはずだが…」
「リヴィアタンがどうした?」
「!?」

ドォォォン!!

後ろから野太く殺意が込められた声に気づいた瞬間に攻撃を仕掛けられた。
 
「反射神経はあいつ譲りみたいだな」
「お前は…メガロドン!」
「今丁度、お前の番を奪いにきたんが…。お前がここに居るということは、番を防御壁の中に入れて置いてきたのだろう?この俺を倒す為に」
「……それがどうした。お前がアオを奪うのなら、俺はお前を倒せばいい事だ」
「…そうか…なら」
「!?」

メガロドンが目の前から姿を消した。

「死んでもらうぞ、重力波(グラビティインパクト)!」
「なっ」

目の前から消えたメガロドンは俺の頭上に素早く現れ、確実に命をとる為に仕掛けてきたため、防御を展開した。

ドォォォン!!
 
「……」
「くっ…」

防御壁でメガロドンの魔法は防げたものの、メガロドンの力は桁違いで、少しでも気をぬけば潰れてしまうような勢いだ。
魔海の戦士は並外れた力を持っていると聞いてはいたが、あまりにも強すぎる上に、この力を感じる限り、前の奇襲はこれよりも弱く、手を抜いていたと言うのがよく分かる。

「どうした?俺を殺るのだろう?」
「あぁ、殺るよ。…本気でな!魔法陣展開!」

メガロドンの体に照準魔法陣を展開し、素早魔法を発動した。
 
「!?」
護りの雨(プロテクトレイン)!!」

空から照準魔法陣を付けられたメガロドンに目掛け、無数の光の矢が降り注いだ。
矢は雨の如く次々と降り注ぎ、衝撃と爆音と共に辺りを一掃し、辺りを土煙で舞い上がった。

「はぁ…はぁ…」

護りの雨(プロテクトレイン)…。
 護りこそ絶対的攻撃。
 放たれた光の矢は敵を1歩とも近付けさせない。
 師匠が魔海戦争において、魔海軍を一掃させたと言われた魔法。
 師匠から唯一教わった魔法…師匠程の威力は俺にはまだないが、確実に攻撃を喰らう魔法な為、避ける事は不可能。

「久しぶりに使ったが、やはりこの魔法は魔力を使いすぎる」
「何が使いすぎるって?」
「なっ!?」
「あいつの弟子と言うのは伊達ではないのは確かだな」
「…化け物か」
「まぁ、焦るな。これでも久しぶりに攻撃を喰らったほうだ」

メガロドンは全身に矢が刺さりながらも、堂々と立っている。

「俺をここまでしたんだ。お前に敬意を評して、俺も全力でいくぞ!」
「望むところだ!!」

互いに素早く動き、攻撃を仕掛けては避け流したり、激しい戦闘を繰り広げる。
しかし、メガロドンの攻撃の1つ1つが重く、守るにも体力が削られていく。

「どうしたぁ!魔法、術を使ってまだまだ俺を楽しませろ!」
「くっ…」

巨体なクセに素早く何より力がつよい!
メガロドンの魔法は重力魔法で、使いこなせば戦場では無敵と言われている魔法の1つ。
だが、メガロドンは本当に戦闘を楽しみたいのか、一向に魔法を使ってこない。
だが、それはある意味都合がいい。
いくら巨体で力も上だとしても、弱点は変わらないはずだ。
そこを狙えば倒せる!

メガロドンの攻撃を素早く避け、背後からメガロドンの頭部を鷲掴みした。
 
「ほう?」
「はぁ、はぁ。やっと捕まえたぞ…いくら巨体で力が強くても、弱点は同じ!!護りの一突(プロテクトぶら)…」
「……重力波(インパクトグラビティ)
「!?」
 
メガロドンは後ろ向きながらも、素早い手のひらを俺に向け重力波を放った

 
 ドゴォォオン!!

「んぐぅ……」

放たれた衝撃波は俺にちょくせつあたり、重力によって勢いよく岩にぶつけられた。

「っ…」

肋骨が呻きを上げるかのように、数本折れたのが分かる。

「…っ」
「アレを直接喰らってもなお生きてるとはな。ただ、今の衝撃で肋骨が折れているはずだ」
「…それがどうした」

痛みなんかどうでもいい、痛みなんか肋骨が折れたとかどうでもいい!
アオを奪おうとする、目の前のこいつを止めないと。

痛みが全身を駆け巡るのを堪え、口から吐血しながらも、足を踏ん張りゆっくりと立ち上がる。

「はぁはぁ…お前が…アオを奪おうする限り、俺は止めてやる」
「何故そこまでして戦う、あのメスを俺に渡せば楽になれるものの」
「…アオは…俺の希望なんだ。アイツが生きている限り、俺はあいつを死ぬ気で護る」
「……そうか、なら死ね」
「!?」

「そこまでよ!」
「「え?」」

ドゴォォオン!!

メガロドンの拳が顔面に一撃入った。

「ぐっ…お前は」

消えていく意識の中で目に写ったのは、見覚えのある男の姿だった。
 
「…リゲリィア」

リゲリィアはメガロドンの拳により、気絶してるセラを見て呆れてる。
 
「メガロドン、アンタやりすぎよ」
「大丈夫だ、死んではいない気絶してるだけだ」
「気絶してるだけだって、肋骨いってるじゃない!」
「治すのがお前の役目だろ?お前の能力ならそれくらいなら治せるだろ。早く治しとけ、俺は行く」
「はぁ…相変わらずの男なんだから、カオルちゃん私達もさっさと済ませましょ」
「言われなくてもしている」

カオルは手際よくセラの怪我に手当てしていく。
カオルは元は、リクの産婦人科医だったが、リゲリィアの元で魔法医学を学び、裏の世界で医者として活躍していた。

「とりあえず、手当ては済ませた。骨折はあと数分すれば治るよ」
「はいよ、とりあえず小魚ちゃんを運ぶわよ」

リゲリィアはセラを担ぎ、カオルと共にその場を去った。