「とと!とと!おきて!」

幼く元気で活きのいい声が、1人の男の目覚ましの様に聞こえてくる。

「ん…アオ…」
「おきて!すいぞくかんいく!」
「水族館って……今深夜の3時だぞ。水族館はまだ空いてない」
「まだぁ?」
「そう、まだ。ほら、かかも今寝てるだろ?アオも寝よ」
「ねたらすいぞくかんあく?」
「あぁ、開く。だからほら、ととと一緒に寝ような」
「うん!」

男は優しく、幼いアオを布団の中に招き入れ、アオの背中を優しく撫でる。
その様子は戦士ではなく、1人の娘の父親の姿だった。

「とと」
「ん?」
「ととのうみのはなしききたい」

アオは瞳を輝かせて、男の話を聞きたいと、楽しみにする。
その幼くも可愛らしい姿に、男は優しく物語を語り始めた。
 
「そうだな、今日は大きなサメの話をしようか」
「サメ!」
「あれは、ととが子どもの頃だったかな…。あの時は夏で魚が波にのりよくとれてた日だった。ととは、いつも通りに釣りに行ったら、見知らぬ子どもがいたんだ。同じ背鰭にサメ特有の尾鰭で、子どもだけどトトよりも大きかった」
「おおきい!!」
「大きかった。身体が大きかったから、漁や狩りがトトよりも上手くて、いつも競い合っていた。時には喧嘩したりしてな、月日が流れるにつれて互いに戦士になり、2人でよく闘ったもんだ」
「ととはかったの?」
「ととはね、勝ったり負けたりだった。若い戦士だったから、勝ち負けと言うよりかは互いに闘える事が喜びだった」
「…そのサメさん、ととのおともだち?」
「そうだな…まぁ、それに久しく会ってはいない」
「あいたいの?」
「会えるなら」
「じゃ!アオがおともだつれてくる!」

アオは父親の為だと言わんばかり、決心したかのように父親に話す。

「そうか、じゃトトは楽しみにするよ。さぁ、アオそろそろ寝よう」
「うん!おやすみ、とと」

アオは優しい父親の腕の中でゆっくりと眠りについた。