「懐かしいな、もう100年以上前の事なのに、アイツの産まれた日を忘れず思い出せるとは」
「オルカ…本当に今日は大丈夫?」
「大丈夫だマツリ。心配するな!」
「でも」
「マツリ、俺は何があってもお前の傍にいるし、今回の試合は俺が絶対に勝つ!」
オーシャンバトル3回戦。
今日はオルカと弟のラキエルのバトル。
シャチ族最強と言われた、最強兄弟が闘う為か今日に限ってはかなり人がお多い。
「凄い人だな…」
「シャチ族同士の闘いだからな」
「シャチ族はそんなに凄い?私はシャチ本来の事しか分からないから」
「シャチ族は指折りに入るくらい、戦闘能力が高い一族だ。戦闘、学問とどの一族にも劣らないくらいにな。そんなシャチ族の中でも常に頂点に立ってきたのが、オルカの一族。アイツの一族がどれほど強いのかはこのアトランティスの人が分かるくらいだ」
「そうなんだ」
観客が今日のバトルを楽しみにしてるのか、観客の声が凄まじい。
しかし、その声をトリトーンの声で静まりかえった。
「さぁさぁ、今日はオーシャンバトル3回戦!!番を見つけ一緒にきてるカップルや、熱い闘いを見てみたい奴がわんさかといるな!」
『おぉぉぉ!』
「いい歓声じゃねぇか!さぁ、オーシャンバトル3回戦、バトルに華を飾る戦士の紹介だ!」
『早く紹介しろー!』
『そうだそうだ!』
「そんなに焦るなオスども!焦るオスはメスに嫌われるぞ!さぁ、紹介するぞ!!シャチ族最強一族の長にして、7天の忍辱戦士!!幼き頃から一族の為、亡き母親のため、コイツ以上に耐えし忍べる奴は居ねぇ!!オルカ・シェーンチ!!」
「相変わらず凄い歓声…」
「戦士と戦士の戦いだからな!これくらい歓声があった方が、盛り上がる」
トリトーンの紹介と同時にオルカとマツリにライトアップされ、2人は会場に入る。
「そして、深海からは…兄オルカに謀反を起こし、己の欲の為に一族を殺したとして、強欲の大罪の名を付けられた。最凶采配士ラキエル・シェーンチ!」
後のラキエルにもライトアップされ、ラキエルは番と共に会場に現れた。
「……」
ラキエル、兄オルカの弟であり、元一族の采配士。
髪の毛や目元は兄オルカと似ているが、体格はオルカとは違い、細くがっしりした感じだ。
幽閉されてたとは言え、戦士としての鍛錬は怠らなかったのは、見た目で分かる。
「お久しぶりですね、兄上」
「相変わらず、元気そうじゃないかラキエル」
「……」
「……」
「両者揃ったところで、レディ…ファイッ!」
トリトーンの合図によりバトルが始まった。
両者は1歩も動かない。
それどころか、ラキエルの番はフードから顔を出すことすらない。
「相変わらず、攻めてこないな!」
「焦らずが待て、闘いにおいて焦ってはいけない」
「そうかよ!」
キィィン!
刀同士が激しくぶつかり合い、ギチギチと刃の音を響かせた。
凄まじい攻防戦で、周りの観客達もその凄さに惹き付けられている。
「兄上いいのですか?番を使わなくても?」
「ラキエル、オルカには必ず勝て」
「!?」
聞き覚えのある声がオルカの耳に入り、それはラキエルに契約指示をする言葉だった。
契約指示とは、番の魔力を使い、契約者である戦士に指示をする。
指示された戦士は命尽きるまで、その指示を遂行しなければならない。
「ラキエルお前!!」
「どうした兄上?そんなに慌てて」
「何故、お前の方から…番の声がマツリと一緒なんだよ!」
「それは、兄上の番本人から聞いたほうがいいのでは?」
両者は激しくも間合いを取りながら、ぶつかり合い互いに1歩も引かない状態が続いている。
やはりシャチ族同士の闘いだからか、凄まじい魔力のぶつかり合いだ。
それに、オルカが忍辱戦士だからこそか、今まで貯めてきた魔力が、今存分に使われているのがよく分かる。
オルカは、肉体にストレスをかけることにより、普段使う魔力とは別に、魔力を蓄電池の様に蓄積する能力がある。
長年蓄積された魔力は凄まじく、使い道を間違えれば国を1つ落としかねない程だ。
「マツリ!指示を!」
「指示って…!」
それはそうだ、普段から闘い慣れしてないマツリには、かなり焦るのも無理はない。
なんせ幾ら、1年番と共に鍛錬してきても実践は別で、実践で動けなかったら、鍛錬してきた意味が無い。
「……ど、どうしよ…でも…」
キンキン!!
「…あー!ダメだ、やっぱり本番だと…でも、逃げちゃダメだ…逃げたら姉さんにも…」
「マツリ!!」
「!?」
「お前が思った事を言えばいい!」
「でも!」
「お前が指示したら、俺は必ず遂行させてやる!」
「オルカ…」
「俺を信じろ」
「……」
オルカの言葉はマツリの不安をかき消すかのように、芯があり、マツリはオルカの言葉を信じ覚悟を決めた。
そして、オルカは本当にマツリを愛し信じているからこそ、不利な状況でも、逃げずに立ち向かっている。
これは、並大抵な戦士じゃ出来なくて、愛を想いやる心を知っているオルカだからこそ出来ることだ。
「…生きて…絶対に生きて勝って!!オルカ!!」
「待っていた!その言葉を!行くぞ!リミッターOFF!!」
オルカはマツリの指示により、今まで制御していた魔力のリミッターを解放すべく、自身の胸に刻まれた鍵穴に親指を刺し解除した。
解除された魔力は凄まじく、長年オルカが耐えに耐えてきた溜め続けた結晶。
耐える事ができるオルカだからこそ、神にも近い魔力を得る事ができたのだ。
「さぁ、これでお互い同じ立ち位置だ!」
「ふっ、兄上らしい!」
ラキエルの攻撃を素早くかわしながら、得意の武器召喚しながら攻撃をする。
ラキエルもラキエルで、オルカ並の魔法で対抗していき、会場は2人の戦闘で盛り上がっていった。
「凄い闘いだ…あれがオルカの弟…。攻撃もオルカと瓜二つ……」
「兄弟だからこそ、技も魔法も似てくる」
兄弟だからこそ、同じ親から知識、武術、道徳を学び育っているから、技が似ることは不思議ではない。
凄まじい闘いを俺とアオは目を逸らさずに真剣に見ていたその時だった。
アオが無性なのか、おもむろに目を擦り始めた。
「ん…」
「アオ、大丈夫か?目にゴミでも入ったのか?」
「いや…ゴミは入ってないんだけど。なんかシパシパしてて…。ん…セラ…それに、あの、ラキエルの番…マツリと瓜二つだ」
「なに?アオ見えるのか?」
ラキエルのフードの番の素顔は俺の場所から見えないはず。
「いや、なんか分からないけど…なんか、急にフードの中がみえて…どうなってんの」
そう言われアオの方を見ると、アオの瞳の色が紅く瞳には魔法陣が出ていた。
「なっ!?」
「セラ…どうなって…」
ドゴゴオォォオン!
凄まじい重力魔法がバトル会場を襲い、オルカとラキエルのバトルを止めた。
ウォォォォ!!
そして、凄まじい声が会場に響き渡る。
「な、なんだ」
「ちっ…来たか」
ラキエルは全てを知ってるかのような反応し、オルカはラキエルがまた何かを企んでいると察した。
「ラキエル、お前今度は何をした!!」
「……兄上。兄上とその番マツリ」
「なんで、私の名前を…」
オルカやマツリ本人から、マツリの名前を聞いてないはずのラキエルが、マツリの名前を知ったように口にした。
それは当然マツリも驚く事でありながらも、先程までフードを被っていた、ラキエルの番が口を開けた。
「私があなたの名前を教えたのよ」
「その声…まさか…」
マツリにとっては懐かしく、1番会いたがっていた人の声。
「久しぶり。マツリ」
「マコト姉さん…」
「ラキエルお前!まさか、マツリの姉まで!」
「兄上、詳しい話は後で言う。今は兄上は一族の為に闘えるか?」
「何をいって…」
「闘えるかと聞いている!!一族の長として7天の戦士として闘えるか!」
「……闘える。闘えなきゃ、今ここにいないだろ!」
「流石だ兄上。私はその言葉が聞きたかった」
「ラキエル…」
「今、あの大罪人のメガロドンが双璧の番を狙ってる。幾らアトランティスの結界も、メガロドンの魔法になれば、早く破れ時期にここにくる。今、双璧の番がメガロドンに奪われれば、アトランティス…いや、陸と海の世界が終わる」
「なっ…」
「とりあえず今は双璧の所に行くぞ!」
雄叫びは人間の者ではないのは確かだ。
重く怒りや憎しみが雄叫びから感じてくる。
俺でもこの感情は分かる…この感情は…復讐だ。
「うああああああああぁぁぁ!」
低く野太く、怒りが込められた雄叫びだ。
その雄叫びは海地を揺らすほど凄まじく、雄叫びに魔力が込められているせいか、アトランティスを包み込んでいる結界が、雄叫びと重力魔法により壊れかけている。
「うわっ!」
「アオ!!」
地鳴りにより、アオと俺の間に亀裂が入り分断された。
「待ってろ!今いく!」
「駄目!今来たら…私…なんかおかしい…なんで…うっ!この雄叫び…頭がうわあああああああああぁぁぁ!」
「なぜ魔力が暴走してる!?アオ!」
アオは魔力を制御しきれず、暴走し始めた。
分からない…なぜ急に魔力の暴走が!?あの魔法陣のせいか…?ええい!考えてる暇はない!
「今はアオを助けないと、このままだと消滅してしまう」
「その必要はないぜぇ?」
「!?」
アオを助けようとした瞬間に、アオの周りに深海のホウズキと怠惰のネオが立ち塞がる。
「お前ら…」
「流石だなぁ、双璧のセラ。お前やオルカが早めに作戦に気付いてたのは俺達も分かっていた」
「作戦に関しては分からないが、お前らが何かを企んでるのは知っていた」
「なら、話が早い。俺らのボスがお前の番を欲しがっててな、ボスが結界を破る前に奪うって訳よ」
「!?」
「僕はめんどくさいのは嫌なんだよねぇ…だから、そこから動くと、お前の番死ぬよ?」
ネオはアオに毒銛を向けた。
「知ってるよね?僕達イモガイ族の毒の恐ろしさを。陸の人間なら、もって1分だ」
「っ…」
どうすればいい…動けばアオが死ぬ。
しかし、アオを助けなければアオが消滅か連れていかれる。
「決まりだね、さぁホウズキ行こう。僕らのボスがそろそろ来るこ…」
2人がアオを連れて行こうとしたその時だった!
「させるかよ!!」
「!?」
ドゴォォォォン
聞き覚えのある声がした瞬間に、ネオとホウズキに稲妻の魔法が当たった。
この素早く激しい稲妻の魔法が使える奴はただ1人。
「エスパーダ!!」
「たくぅ…寝坊したから急いでバトル観ようと来たらこの有様だ。それに人質だぁ?しかも俺のダチの番とはな。それにだ!2対1とは聞き捨てにならねぇな」
「早すぎるって!エスパーダ!」
後に続くように、クルミが息を切らして現れた。
「エスパーダにクルミ…」
「ここは俺とクルミがやる。セラ、お前はアオを助けろ」
「だが、お前らだけじゃ…」
「セラさん、早くアオさんの所に!状況が凄くて分かりにくいですが、今のアオさんにセラさんが必要です!!それに」
「私もいる」
落ち着いて凛々しい声が聞こえ、エスパーダの後から現れたのは。
「イッカク」
「師匠!!」
「セラ、話は後から聞かせてもらうぞ。今はお前の番の暴走を止めろ!!」
「感謝する!!」
「させるか!」
俺は素早くアオの元に向かった。
瞬間、ネオの毒銛がアオに向けて素早く放たれた。
キィィン!
「!?」
「殺らせねぇよ、お前の相手は俺だ」
「くっ…カジキごときが…」
「生憎、俺は今怒ってるんだ。今日やる4回戦は俺の出番だったのに、お前らがぶち壊したおかげで、俺の出番が無くなっちまっただろうがよ!」
エスパーダの怒りは凄まじく、アビス2人の足止めには持ってこいだ。
それに、エスパーダとイッカクの援護のおかげで、アオの元へ辿り着いた。
「うっ…うう…」
「アオ!」
「セ、セラ」
「今助ける!」
俺は自分の左親指を噛み切り、親指から出てきた血で掌に、素早く術式を書いた。
「まさかこうも早く使うとは!封印術式!!護口封印!!」
素早く手をアオの胸元に、力強く押し付けた。
「うわあああ!」
アオの胸元のに出来た、封印術式から無数の海龍がでてきて、海龍の口によりアオの魔力が吸収され、アオの暴走が収まろうとした時だった。
「!?」
俺は素早くその場を魔法防壁をはった。
ゴォォン!
「その娘をよこせ、術士の男よ」
攻撃と同時に現れたのは、あの血塗られた記憶に残っているオスの姿だ。
そのオスが犯してきた罪は数知れず、俺はそのオスに一族1夜にしてを食い殺された。
「お前はメガロドン!」
「ほう?よく見たら貴様、あの一族の生き残りか?」
「っ…」
今でも腹が煮えくり返りそうな怒りが込み上げる。
しかし、ここで俺が動けばアオの魔力の封印が出来なくなる。
「魔法防壁か…アイツに比べたら弱いな」
メガロドンは拳を構え、拳に魔力を溜め込み始めた。
「重力魔法…Lv50」
「!?」
ズドォォン
メガロドンが放った拳が魔法防壁に当たった瞬間、魔法防壁に凄まじい重力がかかった。
アオに術を使ってるのと、今こうして魔法防壁を両方展開してるせいで、重力魔法に耐えるのが精一杯だ。
魔力が圧倒的にメガロドンの方が上なのがよく分かる。
「ほう?まだ耐えきれるか?普通の奴なら50はいとも簡単に潰れるが…まぁ、アイツの弟子なら簡単には潰れるわけはないな。なら、Lv100はどうだ?」
「んぐぅ!」
メガロドンは更に重力をかけてくる。
それは凄まじく、身体が悲鳴をあげている。
全身に重力がかかり、俺が魔法をとけば、アオと諸共潰れてしまう。
「ア、アオは…ぜ、絶対に渡さん…死んでも渡さん」
「そうか、なら死ね」
メガロドンがさらに拳を放った。
「ま、まずい…」
俺は魔力がある限り、魔法防壁を展開した。
それでも無理なのは知っていて、死ぬ覚悟を決めた瞬間。
「待たせたな」
「!?」
バァァン!
俺やアオにとって1番馴染みもあり、安心する声と同時に魔法と魔法がぶつかり相殺した。
「やはり来たか…リヴィアタン」
「師匠…」
「セラ、アオをよく護ったな…オルカ!ラキエル!2人を連れて一旦引くぞ!ゲートを開けろ!」
「あぁ!セラ行くぞ!」
「行かせるかぁ!」
「オールフェンス!!」
「ちっ」
師匠の魔法により、メガロドンの魔法が相殺され、一瞬のうちに俺はアオを抱き抱え、師匠達と一緒にその場から引き、安全地帯まで逃げた。
「オルカ…本当に今日は大丈夫?」
「大丈夫だマツリ。心配するな!」
「でも」
「マツリ、俺は何があってもお前の傍にいるし、今回の試合は俺が絶対に勝つ!」
オーシャンバトル3回戦。
今日はオルカと弟のラキエルのバトル。
シャチ族最強と言われた、最強兄弟が闘う為か今日に限ってはかなり人がお多い。
「凄い人だな…」
「シャチ族同士の闘いだからな」
「シャチ族はそんなに凄い?私はシャチ本来の事しか分からないから」
「シャチ族は指折りに入るくらい、戦闘能力が高い一族だ。戦闘、学問とどの一族にも劣らないくらいにな。そんなシャチ族の中でも常に頂点に立ってきたのが、オルカの一族。アイツの一族がどれほど強いのかはこのアトランティスの人が分かるくらいだ」
「そうなんだ」
観客が今日のバトルを楽しみにしてるのか、観客の声が凄まじい。
しかし、その声をトリトーンの声で静まりかえった。
「さぁさぁ、今日はオーシャンバトル3回戦!!番を見つけ一緒にきてるカップルや、熱い闘いを見てみたい奴がわんさかといるな!」
『おぉぉぉ!』
「いい歓声じゃねぇか!さぁ、オーシャンバトル3回戦、バトルに華を飾る戦士の紹介だ!」
『早く紹介しろー!』
『そうだそうだ!』
「そんなに焦るなオスども!焦るオスはメスに嫌われるぞ!さぁ、紹介するぞ!!シャチ族最強一族の長にして、7天の忍辱戦士!!幼き頃から一族の為、亡き母親のため、コイツ以上に耐えし忍べる奴は居ねぇ!!オルカ・シェーンチ!!」
「相変わらず凄い歓声…」
「戦士と戦士の戦いだからな!これくらい歓声があった方が、盛り上がる」
トリトーンの紹介と同時にオルカとマツリにライトアップされ、2人は会場に入る。
「そして、深海からは…兄オルカに謀反を起こし、己の欲の為に一族を殺したとして、強欲の大罪の名を付けられた。最凶采配士ラキエル・シェーンチ!」
後のラキエルにもライトアップされ、ラキエルは番と共に会場に現れた。
「……」
ラキエル、兄オルカの弟であり、元一族の采配士。
髪の毛や目元は兄オルカと似ているが、体格はオルカとは違い、細くがっしりした感じだ。
幽閉されてたとは言え、戦士としての鍛錬は怠らなかったのは、見た目で分かる。
「お久しぶりですね、兄上」
「相変わらず、元気そうじゃないかラキエル」
「……」
「……」
「両者揃ったところで、レディ…ファイッ!」
トリトーンの合図によりバトルが始まった。
両者は1歩も動かない。
それどころか、ラキエルの番はフードから顔を出すことすらない。
「相変わらず、攻めてこないな!」
「焦らずが待て、闘いにおいて焦ってはいけない」
「そうかよ!」
キィィン!
刀同士が激しくぶつかり合い、ギチギチと刃の音を響かせた。
凄まじい攻防戦で、周りの観客達もその凄さに惹き付けられている。
「兄上いいのですか?番を使わなくても?」
「ラキエル、オルカには必ず勝て」
「!?」
聞き覚えのある声がオルカの耳に入り、それはラキエルに契約指示をする言葉だった。
契約指示とは、番の魔力を使い、契約者である戦士に指示をする。
指示された戦士は命尽きるまで、その指示を遂行しなければならない。
「ラキエルお前!!」
「どうした兄上?そんなに慌てて」
「何故、お前の方から…番の声がマツリと一緒なんだよ!」
「それは、兄上の番本人から聞いたほうがいいのでは?」
両者は激しくも間合いを取りながら、ぶつかり合い互いに1歩も引かない状態が続いている。
やはりシャチ族同士の闘いだからか、凄まじい魔力のぶつかり合いだ。
それに、オルカが忍辱戦士だからこそか、今まで貯めてきた魔力が、今存分に使われているのがよく分かる。
オルカは、肉体にストレスをかけることにより、普段使う魔力とは別に、魔力を蓄電池の様に蓄積する能力がある。
長年蓄積された魔力は凄まじく、使い道を間違えれば国を1つ落としかねない程だ。
「マツリ!指示を!」
「指示って…!」
それはそうだ、普段から闘い慣れしてないマツリには、かなり焦るのも無理はない。
なんせ幾ら、1年番と共に鍛錬してきても実践は別で、実践で動けなかったら、鍛錬してきた意味が無い。
「……ど、どうしよ…でも…」
キンキン!!
「…あー!ダメだ、やっぱり本番だと…でも、逃げちゃダメだ…逃げたら姉さんにも…」
「マツリ!!」
「!?」
「お前が思った事を言えばいい!」
「でも!」
「お前が指示したら、俺は必ず遂行させてやる!」
「オルカ…」
「俺を信じろ」
「……」
オルカの言葉はマツリの不安をかき消すかのように、芯があり、マツリはオルカの言葉を信じ覚悟を決めた。
そして、オルカは本当にマツリを愛し信じているからこそ、不利な状況でも、逃げずに立ち向かっている。
これは、並大抵な戦士じゃ出来なくて、愛を想いやる心を知っているオルカだからこそ出来ることだ。
「…生きて…絶対に生きて勝って!!オルカ!!」
「待っていた!その言葉を!行くぞ!リミッターOFF!!」
オルカはマツリの指示により、今まで制御していた魔力のリミッターを解放すべく、自身の胸に刻まれた鍵穴に親指を刺し解除した。
解除された魔力は凄まじく、長年オルカが耐えに耐えてきた溜め続けた結晶。
耐える事ができるオルカだからこそ、神にも近い魔力を得る事ができたのだ。
「さぁ、これでお互い同じ立ち位置だ!」
「ふっ、兄上らしい!」
ラキエルの攻撃を素早くかわしながら、得意の武器召喚しながら攻撃をする。
ラキエルもラキエルで、オルカ並の魔法で対抗していき、会場は2人の戦闘で盛り上がっていった。
「凄い闘いだ…あれがオルカの弟…。攻撃もオルカと瓜二つ……」
「兄弟だからこそ、技も魔法も似てくる」
兄弟だからこそ、同じ親から知識、武術、道徳を学び育っているから、技が似ることは不思議ではない。
凄まじい闘いを俺とアオは目を逸らさずに真剣に見ていたその時だった。
アオが無性なのか、おもむろに目を擦り始めた。
「ん…」
「アオ、大丈夫か?目にゴミでも入ったのか?」
「いや…ゴミは入ってないんだけど。なんかシパシパしてて…。ん…セラ…それに、あの、ラキエルの番…マツリと瓜二つだ」
「なに?アオ見えるのか?」
ラキエルのフードの番の素顔は俺の場所から見えないはず。
「いや、なんか分からないけど…なんか、急にフードの中がみえて…どうなってんの」
そう言われアオの方を見ると、アオの瞳の色が紅く瞳には魔法陣が出ていた。
「なっ!?」
「セラ…どうなって…」
ドゴゴオォォオン!
凄まじい重力魔法がバトル会場を襲い、オルカとラキエルのバトルを止めた。
ウォォォォ!!
そして、凄まじい声が会場に響き渡る。
「な、なんだ」
「ちっ…来たか」
ラキエルは全てを知ってるかのような反応し、オルカはラキエルがまた何かを企んでいると察した。
「ラキエル、お前今度は何をした!!」
「……兄上。兄上とその番マツリ」
「なんで、私の名前を…」
オルカやマツリ本人から、マツリの名前を聞いてないはずのラキエルが、マツリの名前を知ったように口にした。
それは当然マツリも驚く事でありながらも、先程までフードを被っていた、ラキエルの番が口を開けた。
「私があなたの名前を教えたのよ」
「その声…まさか…」
マツリにとっては懐かしく、1番会いたがっていた人の声。
「久しぶり。マツリ」
「マコト姉さん…」
「ラキエルお前!まさか、マツリの姉まで!」
「兄上、詳しい話は後で言う。今は兄上は一族の為に闘えるか?」
「何をいって…」
「闘えるかと聞いている!!一族の長として7天の戦士として闘えるか!」
「……闘える。闘えなきゃ、今ここにいないだろ!」
「流石だ兄上。私はその言葉が聞きたかった」
「ラキエル…」
「今、あの大罪人のメガロドンが双璧の番を狙ってる。幾らアトランティスの結界も、メガロドンの魔法になれば、早く破れ時期にここにくる。今、双璧の番がメガロドンに奪われれば、アトランティス…いや、陸と海の世界が終わる」
「なっ…」
「とりあえず今は双璧の所に行くぞ!」
雄叫びは人間の者ではないのは確かだ。
重く怒りや憎しみが雄叫びから感じてくる。
俺でもこの感情は分かる…この感情は…復讐だ。
「うああああああああぁぁぁ!」
低く野太く、怒りが込められた雄叫びだ。
その雄叫びは海地を揺らすほど凄まじく、雄叫びに魔力が込められているせいか、アトランティスを包み込んでいる結界が、雄叫びと重力魔法により壊れかけている。
「うわっ!」
「アオ!!」
地鳴りにより、アオと俺の間に亀裂が入り分断された。
「待ってろ!今いく!」
「駄目!今来たら…私…なんかおかしい…なんで…うっ!この雄叫び…頭がうわあああああああああぁぁぁ!」
「なぜ魔力が暴走してる!?アオ!」
アオは魔力を制御しきれず、暴走し始めた。
分からない…なぜ急に魔力の暴走が!?あの魔法陣のせいか…?ええい!考えてる暇はない!
「今はアオを助けないと、このままだと消滅してしまう」
「その必要はないぜぇ?」
「!?」
アオを助けようとした瞬間に、アオの周りに深海のホウズキと怠惰のネオが立ち塞がる。
「お前ら…」
「流石だなぁ、双璧のセラ。お前やオルカが早めに作戦に気付いてたのは俺達も分かっていた」
「作戦に関しては分からないが、お前らが何かを企んでるのは知っていた」
「なら、話が早い。俺らのボスがお前の番を欲しがっててな、ボスが結界を破る前に奪うって訳よ」
「!?」
「僕はめんどくさいのは嫌なんだよねぇ…だから、そこから動くと、お前の番死ぬよ?」
ネオはアオに毒銛を向けた。
「知ってるよね?僕達イモガイ族の毒の恐ろしさを。陸の人間なら、もって1分だ」
「っ…」
どうすればいい…動けばアオが死ぬ。
しかし、アオを助けなければアオが消滅か連れていかれる。
「決まりだね、さぁホウズキ行こう。僕らのボスがそろそろ来るこ…」
2人がアオを連れて行こうとしたその時だった!
「させるかよ!!」
「!?」
ドゴォォォォン
聞き覚えのある声がした瞬間に、ネオとホウズキに稲妻の魔法が当たった。
この素早く激しい稲妻の魔法が使える奴はただ1人。
「エスパーダ!!」
「たくぅ…寝坊したから急いでバトル観ようと来たらこの有様だ。それに人質だぁ?しかも俺のダチの番とはな。それにだ!2対1とは聞き捨てにならねぇな」
「早すぎるって!エスパーダ!」
後に続くように、クルミが息を切らして現れた。
「エスパーダにクルミ…」
「ここは俺とクルミがやる。セラ、お前はアオを助けろ」
「だが、お前らだけじゃ…」
「セラさん、早くアオさんの所に!状況が凄くて分かりにくいですが、今のアオさんにセラさんが必要です!!それに」
「私もいる」
落ち着いて凛々しい声が聞こえ、エスパーダの後から現れたのは。
「イッカク」
「師匠!!」
「セラ、話は後から聞かせてもらうぞ。今はお前の番の暴走を止めろ!!」
「感謝する!!」
「させるか!」
俺は素早くアオの元に向かった。
瞬間、ネオの毒銛がアオに向けて素早く放たれた。
キィィン!
「!?」
「殺らせねぇよ、お前の相手は俺だ」
「くっ…カジキごときが…」
「生憎、俺は今怒ってるんだ。今日やる4回戦は俺の出番だったのに、お前らがぶち壊したおかげで、俺の出番が無くなっちまっただろうがよ!」
エスパーダの怒りは凄まじく、アビス2人の足止めには持ってこいだ。
それに、エスパーダとイッカクの援護のおかげで、アオの元へ辿り着いた。
「うっ…うう…」
「アオ!」
「セ、セラ」
「今助ける!」
俺は自分の左親指を噛み切り、親指から出てきた血で掌に、素早く術式を書いた。
「まさかこうも早く使うとは!封印術式!!護口封印!!」
素早く手をアオの胸元に、力強く押し付けた。
「うわあああ!」
アオの胸元のに出来た、封印術式から無数の海龍がでてきて、海龍の口によりアオの魔力が吸収され、アオの暴走が収まろうとした時だった。
「!?」
俺は素早くその場を魔法防壁をはった。
ゴォォン!
「その娘をよこせ、術士の男よ」
攻撃と同時に現れたのは、あの血塗られた記憶に残っているオスの姿だ。
そのオスが犯してきた罪は数知れず、俺はそのオスに一族1夜にしてを食い殺された。
「お前はメガロドン!」
「ほう?よく見たら貴様、あの一族の生き残りか?」
「っ…」
今でも腹が煮えくり返りそうな怒りが込み上げる。
しかし、ここで俺が動けばアオの魔力の封印が出来なくなる。
「魔法防壁か…アイツに比べたら弱いな」
メガロドンは拳を構え、拳に魔力を溜め込み始めた。
「重力魔法…Lv50」
「!?」
ズドォォン
メガロドンが放った拳が魔法防壁に当たった瞬間、魔法防壁に凄まじい重力がかかった。
アオに術を使ってるのと、今こうして魔法防壁を両方展開してるせいで、重力魔法に耐えるのが精一杯だ。
魔力が圧倒的にメガロドンの方が上なのがよく分かる。
「ほう?まだ耐えきれるか?普通の奴なら50はいとも簡単に潰れるが…まぁ、アイツの弟子なら簡単には潰れるわけはないな。なら、Lv100はどうだ?」
「んぐぅ!」
メガロドンは更に重力をかけてくる。
それは凄まじく、身体が悲鳴をあげている。
全身に重力がかかり、俺が魔法をとけば、アオと諸共潰れてしまう。
「ア、アオは…ぜ、絶対に渡さん…死んでも渡さん」
「そうか、なら死ね」
メガロドンがさらに拳を放った。
「ま、まずい…」
俺は魔力がある限り、魔法防壁を展開した。
それでも無理なのは知っていて、死ぬ覚悟を決めた瞬間。
「待たせたな」
「!?」
バァァン!
俺やアオにとって1番馴染みもあり、安心する声と同時に魔法と魔法がぶつかり相殺した。
「やはり来たか…リヴィアタン」
「師匠…」
「セラ、アオをよく護ったな…オルカ!ラキエル!2人を連れて一旦引くぞ!ゲートを開けろ!」
「あぁ!セラ行くぞ!」
「行かせるかぁ!」
「オールフェンス!!」
「ちっ」
師匠の魔法により、メガロドンの魔法が相殺され、一瞬のうちに俺はアオを抱き抱え、師匠達と一緒にその場から引き、安全地帯まで逃げた。