今の俺達は師匠倒す事は出来ない…ならば直接問いかけて、悪から善に変えさせる。
神…ポセイドン様なら師匠の行いも心内も分かってくれるはずだ。

「ん…ここは?」
「俺の精神の中だ…あの馬鹿弟子…まさかアレを使うとはな…」
「…あっ…あ…」
「アオ…。今の姿じゃ、分かりづらいか?なら昔の姿に…」
「父さん!!」

ギュッ

私は目の前にいる自分の父親に抱き着いた。
記憶が曖昧な筈なのに、父さんの懐かしい姿、感じが私の記憶を蘇らせた。

「あぁ…父さん…」
「…アオ」

父さんは大きな手で私の頭を優しく撫でる。
覚えてるこの感じ、小さい頃に頭をよく撫でられてた。
嬉しさのあまりに涙が止まらず流れ出る。

「うわぁあ」
「すまなかった…お前を1人にしてしまって」
「ひっく…いいんだぁ、だって父さん…父さんがこうして生きてるし…ひっく…うっ…それに、父さんはオーシャンを…世界を守る為に1人で戦ってるのも」
「…全部知ったのか?」
「ううん、全部じゃない…セラもこの1年一緒に調べたの…全部じゃないけど…私思い出したんだ…父さんはあの時…父さんの力を受け継いだ私を狙った天海人に連れて行かれそうになった時、私を助ける為に罪人として深海に堕ちて任務を続けていたんでしょ?」
「………」
「そして、私に会わない状態で母さんとも会っていた…母さんは小さかった私に嘘をついてまで、夜な夜な海に行ってたの知っているから…」
「…やはり、ホタルの奴は本当に嘘が苦手だな…アオにもこうもバレてるとは…。…お前が言った通りだ…俺は禁忌を犯しお前を授かった…だが、お前の力は強すぎた…強い力は深海…。いや魔海軍の標的になった。だから、お前を探し隔離し均衡を保つために天海軍がきた。ポセイドン様にはもうお前が産まれた時から、存在を知られていた。だから、あの時のような事が起きてしまった…」
「そして、力を持つ為に番だった母さん…母さんの魂と契約をし母さんと一緒に…」

父さんは私の目線に合わせるようにしゃがみ、優しく両頬に触れた。

「母さんにそっくりだ…瞳の色は俺似になってしまったが…」
「父さん…」

私は父さんの手を優しく握った。
父さんの手は戦士とは思えなくて、父親らしい温もりだ。

「私もセラも一緒に戦うから!だから、もう1人で戦わなくていい!!」
「…………」
「父さんからしてみたら、私はまだまだ子どもだけど…私からしたら父さんが今もこうして苦しそうに戦うのは見たくない…母さんを亡くした悲しみは私にもある…母さんや父さんがいなくなってから私も虐めてきたヤツらと戦ってきた…父さんみたいに戦ってきた…同じ悲しみがあるなら、同じ幸せな道も行けると思う……だって…」

『親子だから』

「っ!?……ホタル……」
「父さん??」
「……そっか…そうだよなホタル…俺達の娘は小さいままじゃない…成長し大人なってる…アオ…セラとならもしかしたら本当に一緒に世界を救えるかもしれない…」

父さんは優しく手を握った。

「アオ、父さんは直ぐとはお前達のところにはいけない…やるべき事があるからな…それが終わり次第お前達の所にいく…約束だ」
「父さん…」
「このバトルは俺が悪から善に変わったと、トリトーンに言って俺が棄権する」
「!!!!??」
「だから、少しだけ待っててくれ」
「分かった!父さんまってる」

師匠は俺の腕から離れた瞬間、青の意識が戻ったのを感じた。

「アオ、なんとかやれたのか?」
「…………バトルマスター」
「あ、なんだ?」
「俺はこの闘いを棄権し、悪から善に変わった事を宣言する」
「なっ!?なんという事だ!あの最強戦士が棄権!?!?せっかくの盛り上がりの途中で棄権!一体誰が…」
「もういいだろうトリトーン」
「と、父ちゃん!?」

トリトーンの背後から海水と一緒に海神のポセイドンが現れた。

「1連のやり取り見ていたぞリヴィアタン」
「ポセイドン様…」
「お主は天海をあの惨劇から救った事も、今こうして魔界軍から天海を護ってるのも分かる。じゃが、禁忌を犯したことには変わりはない。しかし、父親と娘をこれ以上離れ離れにする権利は私達にはない…。それで」
「…………」
「……条件付きでお前を天海に戻す。1年はイッカクを監視役としてお前のそばに置く、分かったな?」
「あぁ…」
『なんという事だぁぁ!悪から善に変わったぁ!!!稀に見れない決着の付け方だ!!』
「出来の悪い弟子と番に色々言われたからな……感謝しますポセイドン様」
「いいんだ、ワシにも子がいるからな…親子は誰にも引き裂くことは出来ない」

師匠は少し呆れたような表情しながらも、俺の方を見た。

「セラ、アオのことを頼む…かなり魔力を使ってるから、多分合体を解いたらアオの奴気絶してるかもしれないからな…。あいつが目覚める頃に戻れるようにはする」
「分かりました師匠…俺達の声に応えていただきあり…」
「あと、セラ」
「なんですか??」

師匠の表情が一気に黒くなった…まずいあの表情は…非常にまずい。
あの表情は、俺が弟子の時に散々見てきた、師匠の殺意ありの怒り!

「お前、アオの首筋に魔法呪を残したな?俺が分からなかったと思ったか?」
「!?!?!?」
「しかもなんだ、アオの左手の薬指の指輪」
「…………」
「おい、何故無言で俺をみない?」
「いや、その…それは」
「まぁ、いい後でその話を…師匠…いや、父親として聞くとしよう」

目が笑ってない……。
師匠には俺とアオがどこまでしてきたのか全て見抜かれていた。
父親として当然な反応だろう……。
多分この後俺は師匠に110年振りに思いっきりしばかれるのだと悟った。