どどどっと馬を走らせながら、そんな事を考えるが。どうにも城から漂う雰囲気が「いつも」ではないと感じ取ってしまう。
嫌な予感は拭えず、わらわが進む道も暗澹としたままじゃ。
わらわはグッと奥歯を噛みしめてから、「すまぬ!道を空けよ!」と声を荒げ、馬を止めずに城に通ずる中央の道を走った。
民達はいつもと違う姿に困惑し、「姫様、どうしたのだろう」という声が漏れていたが。わらわはいつもの様に民達に答える時間を作れなかった。
そして城の門前に着くが、不思議な事にいつも立っている門兵が誰もいなかった。それだけでなく、櫓に立っている者の姿も見えない。
「帰ったぞ!門を開けよ!」
声を張り上げ、城の外で彷徨いている誰かに声を届ける。城の外にいたら聞こえないはずはない声量なのに、誰一人として声が帰って来なかった。
暗雲が心中を覆い尽くさんばかりに広がっていく。それだけではない、風に乗って鼻腔にある匂いが突き抜け、わらわは血の気が失し始めた。
この匂いは・・血?まさか、まさか・・・。
わらわが怪訝に顔を染めると。後ろの家臣達も同じ気持ちらしく、「おかしくないか」と切羽詰まった声でヒソヒソと言い出し始めた。
「誰そ、おらぬか!姫様がご帰還なされたぞ!」
総介も声を張り上げて、誰何するが。やはり一向に答えが返ってこない。慌ただしく門を開けようとする気配もない。おかしいのではないかと言う思いが、段々と確証になっていく。
「はしごを持ってまいれ!塀を登って入る!」
わらわは馬を下り、纏っていた甲冑をその場でカチャカチャと外していく。
だが、はしごを借りてきた家臣の麻井小太郎信好(あさいこたろうのぶよし)と、家臣の中でも一番剽悍な加家四郎頼宣(かけしろうよりのぶ)が「拙者らが入り、門を押し開けまする。姫様はここに!」と息を切らせながら、わらわに進言した。
すぐに「何を言うか、わらわも参るぞ!」といきり立つが、総介から「姫様!」と厳しい声が飛んだ。
甲冑を脱ぎ捨て終わり塀を登る気満々だったが、ハッとその場で止まり、ゆっくりと総介の方を振り向く。
いつもの様な優しげな微笑みは無かった。初めて見る程、彼の顔は険しく、影がかかっていた。
嫌な予感は拭えず、わらわが進む道も暗澹としたままじゃ。
わらわはグッと奥歯を噛みしめてから、「すまぬ!道を空けよ!」と声を荒げ、馬を止めずに城に通ずる中央の道を走った。
民達はいつもと違う姿に困惑し、「姫様、どうしたのだろう」という声が漏れていたが。わらわはいつもの様に民達に答える時間を作れなかった。
そして城の門前に着くが、不思議な事にいつも立っている門兵が誰もいなかった。それだけでなく、櫓に立っている者の姿も見えない。
「帰ったぞ!門を開けよ!」
声を張り上げ、城の外で彷徨いている誰かに声を届ける。城の外にいたら聞こえないはずはない声量なのに、誰一人として声が帰って来なかった。
暗雲が心中を覆い尽くさんばかりに広がっていく。それだけではない、風に乗って鼻腔にある匂いが突き抜け、わらわは血の気が失し始めた。
この匂いは・・血?まさか、まさか・・・。
わらわが怪訝に顔を染めると。後ろの家臣達も同じ気持ちらしく、「おかしくないか」と切羽詰まった声でヒソヒソと言い出し始めた。
「誰そ、おらぬか!姫様がご帰還なされたぞ!」
総介も声を張り上げて、誰何するが。やはり一向に答えが返ってこない。慌ただしく門を開けようとする気配もない。おかしいのではないかと言う思いが、段々と確証になっていく。
「はしごを持ってまいれ!塀を登って入る!」
わらわは馬を下り、纏っていた甲冑をその場でカチャカチャと外していく。
だが、はしごを借りてきた家臣の麻井小太郎信好(あさいこたろうのぶよし)と、家臣の中でも一番剽悍な加家四郎頼宣(かけしろうよりのぶ)が「拙者らが入り、門を押し開けまする。姫様はここに!」と息を切らせながら、わらわに進言した。
すぐに「何を言うか、わらわも参るぞ!」といきり立つが、総介から「姫様!」と厳しい声が飛んだ。
甲冑を脱ぎ捨て終わり塀を登る気満々だったが、ハッとその場で止まり、ゆっくりと総介の方を振り向く。
いつもの様な優しげな微笑みは無かった。初めて見る程、彼の顔は険しく、影がかかっていた。



