「花影!」
声高に叫び、パチンッと強く指を鳴らした刹那。その黒点がバッと開き、影の桔梗が咲いた。黒点だった蕾は花を次々と咲かせ、体中に広がっていく。
花は口や顔に覆い、呼吸の邪魔をするが。花影は、呼吸困難に陥らせる為だけの術ではない。
この術の真骨頂は、花が咲いた所から妖力を奪い取り、妖力を枯渇させる所にある。妖力を奪い続けられる一方で供給も出来ない為、妖怪としての死を迎えるのだ。
力が大きい妖怪ほど、花の育ちは速い。故に、呼吸も速く苦しくなり、奪われる力も多くなっていく。
俺が使える、幻影術の中でも二番目に強い術。それが花影だ。
妖王はうううと低く呻き始め、苦しみにもがく姿を見せ始める。
これで妖王は再起不能の状態に陥らせた。速く美張に戻り、お二方をお助けせねば。
くるっと踵を返し、だだっ広い部屋を出て行こうと駆け出した時だった。
バシュッと、何かが弾ける音が聞こえる。それだけではない、今の今まで感じていた強い妖気が、急に霞に紛れた様に消えていくのだ。
何が起こった?花影が決まって、妖力が枯渇して死んだのか?
バッと振り向くと、俺は目の前の光景に目を剥いた。玉座で苦しんでいたはずの妖王の姿はどこにもなく、もくもくと煙が揺蕩っていた。
愕然とするのを通り越して、もはや唖然としてしまう。
どういう事だと考える事すらも出来ず、ただただ目の前の状況を食い入る様に見つめるだけ。
「速く行った方が良いぞ、御影。ここは人間界よりも時間が大幅に遅れておるからなぁ」
うふふと言う、蠱惑的な笑みが部屋に響く。
そして、さーっと揺蕩っていた煙が引いて無くなり、完璧に妖気も消えた。
まさか・・・あの女。最初から、分身の状態だったのか。本体はここにおらず、分身で相対させていたのか。最初から分身で迎える事で、目に見える妖王が本体だと俺に錯覚させる。
今の今まで感じていた大きな妖気は、妖王にとっては半分も行かない妖気だったと言うのか。
「人間の振りをして長く生きすぎたな、御影よ」
先程、分身の妖王が告げた言葉が頭の中で嫌にハッキリと反芻される。
あの時、あの女は分身だと見抜けない事も愚かだと言っていたのか。
憤懣とする怒りが湧き上がるが。俺はその怒りを抱えたまま部屋を飛び出し、京の姿に戻しながら空に舞い上がった。
声高に叫び、パチンッと強く指を鳴らした刹那。その黒点がバッと開き、影の桔梗が咲いた。黒点だった蕾は花を次々と咲かせ、体中に広がっていく。
花は口や顔に覆い、呼吸の邪魔をするが。花影は、呼吸困難に陥らせる為だけの術ではない。
この術の真骨頂は、花が咲いた所から妖力を奪い取り、妖力を枯渇させる所にある。妖力を奪い続けられる一方で供給も出来ない為、妖怪としての死を迎えるのだ。
力が大きい妖怪ほど、花の育ちは速い。故に、呼吸も速く苦しくなり、奪われる力も多くなっていく。
俺が使える、幻影術の中でも二番目に強い術。それが花影だ。
妖王はうううと低く呻き始め、苦しみにもがく姿を見せ始める。
これで妖王は再起不能の状態に陥らせた。速く美張に戻り、お二方をお助けせねば。
くるっと踵を返し、だだっ広い部屋を出て行こうと駆け出した時だった。
バシュッと、何かが弾ける音が聞こえる。それだけではない、今の今まで感じていた強い妖気が、急に霞に紛れた様に消えていくのだ。
何が起こった?花影が決まって、妖力が枯渇して死んだのか?
バッと振り向くと、俺は目の前の光景に目を剥いた。玉座で苦しんでいたはずの妖王の姿はどこにもなく、もくもくと煙が揺蕩っていた。
愕然とするのを通り越して、もはや唖然としてしまう。
どういう事だと考える事すらも出来ず、ただただ目の前の状況を食い入る様に見つめるだけ。
「速く行った方が良いぞ、御影。ここは人間界よりも時間が大幅に遅れておるからなぁ」
うふふと言う、蠱惑的な笑みが部屋に響く。
そして、さーっと揺蕩っていた煙が引いて無くなり、完璧に妖気も消えた。
まさか・・・あの女。最初から、分身の状態だったのか。本体はここにおらず、分身で相対させていたのか。最初から分身で迎える事で、目に見える妖王が本体だと俺に錯覚させる。
今の今まで感じていた大きな妖気は、妖王にとっては半分も行かない妖気だったと言うのか。
「人間の振りをして長く生きすぎたな、御影よ」
先程、分身の妖王が告げた言葉が頭の中で嫌にハッキリと反芻される。
あの時、あの女は分身だと見抜けない事も愚かだと言っていたのか。
憤懣とする怒りが湧き上がるが。俺はその怒りを抱えたまま部屋を飛び出し、京の姿に戻しながら空に舞い上がった。



