「俺を今更こんな所に呼びつけた理由はなんですか。妖王様」
「母上と呼べ、母上と」
妖艶な笑みを広げる妖王に対し、俺の顔は更に嫌悪に染まり「は?」と呆れと怒りが混じった声を漏らす。
「お前を母と呼ぶ道理がない」
俺の冷淡な声に、妖王は「ほぉ、道理と申してきたか」とクックッと面白そうに笑ったが。スッと冷ややかに目を細めて、パタパタと扇を煽ぎながら「哀れじゃなぁ」と嘲笑った。
「お前が幾ら己を否定した所で、お前が幾ら姿を偽った所で。わらわの、妖王の息子と言う肩書きは、一生消えぬと言うのにのぅ」
酷薄に告げると、俺に向かって細い人差し指をシュッと素早く向けた。
嫌な予感がして、バッと両腕を交差し、顔の前に構えた刹那。俺の変化の術がシュッと剥がれ落ち、妖怪の姿となってしまった。
ぶわっと現れる、九本の尾と長い爪と縦耳。そして目の前の女そっくりの長い白色の髪。
「ホホホッ。その格好の方が良きものよ、御影よ。汚らわしい人間の姿なんかよりも良いではないか。しかしまぁ、げにわらわに覚ゆものじゃのぉ。ま、目だけが父譲りなのが口惜しい所か」
ケラケラと嘲笑いながら、俺の姿を舐めるように見つめる。
凄まじい程の嫌気と吐き気、そして全身の血が沸騰しそうな程の怒りが俺を襲った。
だからこの姿は嫌なのだ、言われなくともそれを感じるから。姫に言われた、お前はお前だと言う言葉が。姫が好きだと言ってくれたこの姿が、この女を前にすると、一瞬にして元の位置づけに戻る。
「お前が・・・俺の父上の事を話すな」
怒りを露わにしながら、唸る様に言葉をぶつける。だが、女は余裕な笑みを見せるだけだった。
「そう言えば、お前は父の方ばかりに懐いておったなぁ。なぜだか、この母には全く懐かなんだ。幼き時から、お前はちいとも愛い奴ではなかったのぉ」
「黙れ。お前は俺の母ではない。母親面をするな」
「吠えるな、吠えるな。よう分かったぞ、父の事でわらわを許せないのじゃな?だがな、御影よ。昔の事は忘れろ。長い時を生きる妖怪が、そんな事に固執するとは。げに愚かぞ?」
面白げに告げられる言葉に、俺は歯がみしながら「そんな事?」と呟いた。
どれほどの年月が経っても、色あせる事がない記憶が。鮮明に繰り返す事が出来る悪夢が、瞼の裏にしっかりと映される。
「母上と呼べ、母上と」
妖艶な笑みを広げる妖王に対し、俺の顔は更に嫌悪に染まり「は?」と呆れと怒りが混じった声を漏らす。
「お前を母と呼ぶ道理がない」
俺の冷淡な声に、妖王は「ほぉ、道理と申してきたか」とクックッと面白そうに笑ったが。スッと冷ややかに目を細めて、パタパタと扇を煽ぎながら「哀れじゃなぁ」と嘲笑った。
「お前が幾ら己を否定した所で、お前が幾ら姿を偽った所で。わらわの、妖王の息子と言う肩書きは、一生消えぬと言うのにのぅ」
酷薄に告げると、俺に向かって細い人差し指をシュッと素早く向けた。
嫌な予感がして、バッと両腕を交差し、顔の前に構えた刹那。俺の変化の術がシュッと剥がれ落ち、妖怪の姿となってしまった。
ぶわっと現れる、九本の尾と長い爪と縦耳。そして目の前の女そっくりの長い白色の髪。
「ホホホッ。その格好の方が良きものよ、御影よ。汚らわしい人間の姿なんかよりも良いではないか。しかしまぁ、げにわらわに覚ゆものじゃのぉ。ま、目だけが父譲りなのが口惜しい所か」
ケラケラと嘲笑いながら、俺の姿を舐めるように見つめる。
凄まじい程の嫌気と吐き気、そして全身の血が沸騰しそうな程の怒りが俺を襲った。
だからこの姿は嫌なのだ、言われなくともそれを感じるから。姫に言われた、お前はお前だと言う言葉が。姫が好きだと言ってくれたこの姿が、この女を前にすると、一瞬にして元の位置づけに戻る。
「お前が・・・俺の父上の事を話すな」
怒りを露わにしながら、唸る様に言葉をぶつける。だが、女は余裕な笑みを見せるだけだった。
「そう言えば、お前は父の方ばかりに懐いておったなぁ。なぜだか、この母には全く懐かなんだ。幼き時から、お前はちいとも愛い奴ではなかったのぉ」
「黙れ。お前は俺の母ではない。母親面をするな」
「吠えるな、吠えるな。よう分かったぞ、父の事でわらわを許せないのじゃな?だがな、御影よ。昔の事は忘れろ。長い時を生きる妖怪が、そんな事に固執するとは。げに愚かぞ?」
面白げに告げられる言葉に、俺は歯がみしながら「そんな事?」と呟いた。
どれほどの年月が経っても、色あせる事がない記憶が。鮮明に繰り返す事が出来る悪夢が、瞼の裏にしっかりと映される。



