フッと微笑を漏らすと、静かに先程の姫の言葉を噛みしめる様に何度も反芻する。姫の言葉は心にじわりと奥まで浸透し、心が穏やかになる。
この大嫌いな姿に、初めて良さを見出してしまった。嫌悪を抱き、ひどく憎い母に似ている姿という位置づけのはずが、姫の好きな姿と言う位置づけに変わってしまった。
「俺は俺、か」
呟いてから、俺らしくない柔らかな笑みが顔に広がる。
俺は姫の言葉で、どれほど救われている事か。まぁ、姫はそれに気がついていないのだろうが。俺は何度も救われているのだ。
このお方には、武将としての強さもあるかもしれないが。姫が持っているのは、その強さだけではない。
優しさと言う、強さだ。自分を疎かにしてまで他人の事を一番に考え、位と言う壁も気にせず、皆に平等。そして他人の事で一生懸命に鳴り、真剣に怒ってくれるし、涙を流してくれる。姫は、そんな温かい強さを持った人間だ。
数多の人間が持つ事は無い強さを、こんな年で、こんな小さな柔な体に詰め込んでいる。それは言葉に出来ぬ程凄い事であるし、姫が人々から慕われる理由も頷けるが。
それは良い事でもあるし、危うい事でもあると、俺は思うのだ。
姫は、他人と自分を秤にかけると、圧倒的に他人に重さが傾く。自分の事を顧みず、他人を慮り続ける。
だから俺は、不安に駆られるのだ。誰一人として取りこぼすまいとしている姿を、自分なんかどうでも良いとしている姿を側で見続けていると。堪らなく不安になる時があるのだ。
いつかその強さが、姫の重荷となり、身を蝕み、自身を滅ぼしかねない事になるのではないか、と。
勿論、こんな不安は持つべきではない。姫にそんな選択をさせない様にすべきであるし、第一縁起でもない事なのだ。
だから完璧に杞憂であるとは、重々理解している。
だが、やはりこの不安を消す事は出来ない。この人の側に居ると、思い知らされるから。姫はどんなに強くても、人間なのだ、と。
人間はあまりにも脆くて、儚い存在だ。故に、いつかその強さと釣り合いが取れない時がやって来て、姫が危険な状態に陥るのではないか。今はこうして肩にもたれかかり、スウスウと寝息を立ててくれているが、それすらも出来なくなる時が来るのではないか・・。
この大嫌いな姿に、初めて良さを見出してしまった。嫌悪を抱き、ひどく憎い母に似ている姿という位置づけのはずが、姫の好きな姿と言う位置づけに変わってしまった。
「俺は俺、か」
呟いてから、俺らしくない柔らかな笑みが顔に広がる。
俺は姫の言葉で、どれほど救われている事か。まぁ、姫はそれに気がついていないのだろうが。俺は何度も救われているのだ。
このお方には、武将としての強さもあるかもしれないが。姫が持っているのは、その強さだけではない。
優しさと言う、強さだ。自分を疎かにしてまで他人の事を一番に考え、位と言う壁も気にせず、皆に平等。そして他人の事で一生懸命に鳴り、真剣に怒ってくれるし、涙を流してくれる。姫は、そんな温かい強さを持った人間だ。
数多の人間が持つ事は無い強さを、こんな年で、こんな小さな柔な体に詰め込んでいる。それは言葉に出来ぬ程凄い事であるし、姫が人々から慕われる理由も頷けるが。
それは良い事でもあるし、危うい事でもあると、俺は思うのだ。
姫は、他人と自分を秤にかけると、圧倒的に他人に重さが傾く。自分の事を顧みず、他人を慮り続ける。
だから俺は、不安に駆られるのだ。誰一人として取りこぼすまいとしている姿を、自分なんかどうでも良いとしている姿を側で見続けていると。堪らなく不安になる時があるのだ。
いつかその強さが、姫の重荷となり、身を蝕み、自身を滅ぼしかねない事になるのではないか、と。
勿論、こんな不安は持つべきではない。姫にそんな選択をさせない様にすべきであるし、第一縁起でもない事なのだ。
だから完璧に杞憂であるとは、重々理解している。
だが、やはりこの不安を消す事は出来ない。この人の側に居ると、思い知らされるから。姫はどんなに強くても、人間なのだ、と。
人間はあまりにも脆くて、儚い存在だ。故に、いつかその強さと釣り合いが取れない時がやって来て、姫が危険な状態に陥るのではないか。今はこうして肩にもたれかかり、スウスウと寝息を立ててくれているが、それすらも出来なくなる時が来るのではないか・・。