そして口を離して、プハッと一呼吸つくが。わらわは自分の体の違和感を覚える。
おかしいぞ。怒っているはずなのじゃが、どこか頭がふわふわとしてきたの。
仄かにそれを感じた瞬間、体の機能が段々と下がって来るのをしっかりと感じた。その代わりに上がって来る、凄まじい眠気。
ううん、まずいのぅ。眠とうなってきたわ。
ヒラヒラと周りを舞う蝶の姿が、何重にも見える。輪郭を捕らえず、綺麗な白い光が星を揺らしながら飛んでいる様に見えてきた。
ここは眠気を払わねばならぬ所だ。いかん、しっかりせねば。しっかりするのじゃ・・千和よ・・・。
だが、心にぴしぴしと鞭を入れる程、瞼がとろんと重たくなってきた。
そして遂に、堪えきれずに瞼がゆっくりと閉じていく。寝てはならんと思ったが、自分の声はとぷんと闇に沈み、ふわふわと意識が無くなっていった。
しかし最後に聞こえた気がするのじゃ。もぞもぞと囁く様に告げる京の声が。
「姫、俺は貴方に拾われて良かったです。だって・・」
Side・京 最高の夜には
「姫、俺は貴方に拾われて良かったです。だって」
あの時の事を瞼に映しながら呟いていると、唐突にコテッと右肩に重みを感じた。その重みの正体を見ようと、顔を少し横にすると。姫が俺の肩にもたれかかり、スウスウと心地良い寝息を立てていた。
寝てしまわれたのか・・・。今、丁度良い話をしようと言う時だったのに。
まあ・・これもこれで姫らしい、か。
俺は九本のうちの、右二つで姫の体を器用に受け止めつつ、肩にもたれかけさせつつの状態を保たせた。
そして寒くない様に風よけを術で作ってから、ぽんと打掛を出して、姫の前を覆うようにしてかける。
姫のスウスウと言う寝息が、静かな夜に小さく響く。秋の虫も風情に鳴いているので、聞こえているのはこの二つだけ。
こんなにも静謐な夜を迎えられているのは、今この日本ではこの美張だけだろうな。
それも間違い無く姫のおかげだ。
俺は静かな城下町から、横で眠っている姫に視線を移した。
そんな美張の平和の立役者であるお方が。卑しい妖怪である俺の手なんか、届く事はない程尊いお方が。俺の肩で全幅の信頼をおいて眠りこけているなんてな。
妖怪と言えども、俺も男なのだが。姫は分かっていないな。まあ、信頼されている証として受け取ろうか。
おかしいぞ。怒っているはずなのじゃが、どこか頭がふわふわとしてきたの。
仄かにそれを感じた瞬間、体の機能が段々と下がって来るのをしっかりと感じた。その代わりに上がって来る、凄まじい眠気。
ううん、まずいのぅ。眠とうなってきたわ。
ヒラヒラと周りを舞う蝶の姿が、何重にも見える。輪郭を捕らえず、綺麗な白い光が星を揺らしながら飛んでいる様に見えてきた。
ここは眠気を払わねばならぬ所だ。いかん、しっかりせねば。しっかりするのじゃ・・千和よ・・・。
だが、心にぴしぴしと鞭を入れる程、瞼がとろんと重たくなってきた。
そして遂に、堪えきれずに瞼がゆっくりと閉じていく。寝てはならんと思ったが、自分の声はとぷんと闇に沈み、ふわふわと意識が無くなっていった。
しかし最後に聞こえた気がするのじゃ。もぞもぞと囁く様に告げる京の声が。
「姫、俺は貴方に拾われて良かったです。だって・・」
Side・京 最高の夜には
「姫、俺は貴方に拾われて良かったです。だって」
あの時の事を瞼に映しながら呟いていると、唐突にコテッと右肩に重みを感じた。その重みの正体を見ようと、顔を少し横にすると。姫が俺の肩にもたれかかり、スウスウと心地良い寝息を立てていた。
寝てしまわれたのか・・・。今、丁度良い話をしようと言う時だったのに。
まあ・・これもこれで姫らしい、か。
俺は九本のうちの、右二つで姫の体を器用に受け止めつつ、肩にもたれかけさせつつの状態を保たせた。
そして寒くない様に風よけを術で作ってから、ぽんと打掛を出して、姫の前を覆うようにしてかける。
姫のスウスウと言う寝息が、静かな夜に小さく響く。秋の虫も風情に鳴いているので、聞こえているのはこの二つだけ。
こんなにも静謐な夜を迎えられているのは、今この日本ではこの美張だけだろうな。
それも間違い無く姫のおかげだ。
俺は静かな城下町から、横で眠っている姫に視線を移した。
そんな美張の平和の立役者であるお方が。卑しい妖怪である俺の手なんか、届く事はない程尊いお方が。俺の肩で全幅の信頼をおいて眠りこけているなんてな。
妖怪と言えども、俺も男なのだが。姫は分かっていないな。まあ、信頼されている証として受け取ろうか。