か、可愛い。これが京なのか?とても信じられぬ、可愛すぎるのではないか。
 そーっと手を伸ばし、もふもふとした頭を撫でると「ひょえっ」と素っ頓狂な声が子狐ちゃんから上がり、ぴょんとその場で高く飛び上がってしまった。
 そして現れる、赤面しながら頭を押さえる妖怪姿の京。可愛らしい姿が消え、こちらとしてはかなり肩が落ちる。
「ひ、姫。あの、あの姿でも、俺なので。気軽に、あんな事をやらないで下さい。姫なんですから」
 赤面しながら訥々と語り、「本当に姫はそう言う所がある」と、なぜだかわらわを窘め始めた。
 何故?と思うが、「本当にもう」と言いながらも、頭を押さえて、まんざらではなさそうな顔をしている。
「もう一度、子狐姿になってくれまいか?」
 わらわがぶつぶつとした言葉をバッサリ遮って頼むと、「嫌ですよ」と間髪入れずに答えられた。
 残念じゃ、あの姿は良かったのに。と落胆してしまうが。いつもより蠱惑的で端正な姿にドキドキッと胸が高鳴り始め、落胆の気持ちが薄れていく。
 やはり慣れぬ、京は京なのに。いつもと容姿が違うだけで、こんなにざわつくとは。落ち着くのじゃ、京は京なのじゃから。
 わらわが一人で悶えている横から、「姫?」と怪訝な声がした。
「何じゃ」
 急いでいつもの声を取り繕って、わあわあと騒がしい内心を押しとどめる。
「そんなに・・・この姿がお嫌ですか?」
 ぺたんと縦耳も九本の尾も垂れ、しゅんとする京。
 いつもは感情が読み取りづらく、本心が見えないと言うのに。こ、こんなに分かりやすい京は初めてだぞ?!
 少し愕然としながらも、慌てて「いや、そうではない」と返すが。
「嘘ですよね。この姿だと、姫の態度がおかしくなりますもん」
「い、いや。それは」
「子狐の時はお顔が明るかったのに、この姿に戻った途端しおらしくなったと言うか。姫らしくなくなって、思い返せば最初もおかしかったですし」
 だらだらと悲しみに溢れた言葉が止まらぬ京に、わらわが「いや、そうじゃなくて」と口を挟むも。すぐに「嫌なのは分かりますよ。この姿は俺も嫌いですし」などと、すぐに言葉を重ねられ、弁解の時間を与えてくれない。
「この姿だと、姫を怖がらせてしまうと分かった以上・・・」
「ええい、止まれ!口を噤め!」