さて、もう一人の仏頂面はどこでもみくちゃにされておるかの。京の事だから、しれっとしたまま酒を煽っているだろうかの。
わらわは酒を飲みながら、室内をぐるっと見回した。
しかし、わらわの目は京の姿を確認する事が出来なかった。わらわの顔が少し「うん?」と怪訝になる。
この部屋に居るものだとばかり思っていたが。おかしいの、わらわが見つけられなかったのか?
ごしごしと目を擦り、もう一度室内を見回す。先程よりもじっくりと。
だが、やはり京の姿をどこにも見つけられなかった。裸踊りをしている一団。楽器を鳴らして、場を盛り上げている一団。酒をグビグビと飲み、かなり出来上がっている一団。食事に手を伸ばしながら、わらわの昔話に花を咲かせている一団。
どの一団にも、京の姿はない。
「父上、京を知りませぬか?」
横で母上と共に談笑していた父上は、わらわの問いかけを聞くと「いないか?」という顔をしたが、すぐに思い出した様で「ああ」と言葉を漏らした。
「今宵は、満月だからのぅ」
父上のその言葉で、わらわはピンと来た。
そうか、今宵は満月であったか。だからか、京がいないのは。
わらわは酒の入った瓢箪を掴み、「しばし、席を外します」と父上に告げると「おう」と朗らかな返事が返ってきた。
その声を聞いてから、騒いでいる家臣達に目ざとく見つけられない様に、スッと大宴会の真っ最中である部屋を抜け出す。
どうやら馬鹿騒ぎに夢中だったらしくて、わらわが宴席を外した姿を見られなかった様だ。酒のせいもあって、わらわが抜け出した事すら気がついておらぬのだろう。
一人でふうと胸をなで下ろしてから、ひっそりと静まり帰った廊下を歩いた。床を踏み、キイと鳴る足音が、いつも以上に響く。
いつもは誰かが歩き回り、幾人の足音がしているものなのに。ここの人間が一堂に集まると、他はこんなにもがらんとして寂しくなるのだなぁ。
わらわは羽織っている打掛の襟を軽く握ってから、月明かりだけを頼りに京を探し回る。
今宵は満月。京が妖怪に戻る、月に一度の日だ。
京の妖力が高まり、いつも自身にかけている変化の術が解けて、妖怪の姿に戻ってしまうと言う日なのだ。
不思議とその姿を京は見せたがらず、満月の日は必ずどこかに雲隠れする。そうしてどこかに身を隠して、満月の夜を過ごし、朝には平然と戻ってくるのだ。
わらわは酒を飲みながら、室内をぐるっと見回した。
しかし、わらわの目は京の姿を確認する事が出来なかった。わらわの顔が少し「うん?」と怪訝になる。
この部屋に居るものだとばかり思っていたが。おかしいの、わらわが見つけられなかったのか?
ごしごしと目を擦り、もう一度室内を見回す。先程よりもじっくりと。
だが、やはり京の姿をどこにも見つけられなかった。裸踊りをしている一団。楽器を鳴らして、場を盛り上げている一団。酒をグビグビと飲み、かなり出来上がっている一団。食事に手を伸ばしながら、わらわの昔話に花を咲かせている一団。
どの一団にも、京の姿はない。
「父上、京を知りませぬか?」
横で母上と共に談笑していた父上は、わらわの問いかけを聞くと「いないか?」という顔をしたが、すぐに思い出した様で「ああ」と言葉を漏らした。
「今宵は、満月だからのぅ」
父上のその言葉で、わらわはピンと来た。
そうか、今宵は満月であったか。だからか、京がいないのは。
わらわは酒の入った瓢箪を掴み、「しばし、席を外します」と父上に告げると「おう」と朗らかな返事が返ってきた。
その声を聞いてから、騒いでいる家臣達に目ざとく見つけられない様に、スッと大宴会の真っ最中である部屋を抜け出す。
どうやら馬鹿騒ぎに夢中だったらしくて、わらわが宴席を外した姿を見られなかった様だ。酒のせいもあって、わらわが抜け出した事すら気がついておらぬのだろう。
一人でふうと胸をなで下ろしてから、ひっそりと静まり帰った廊下を歩いた。床を踏み、キイと鳴る足音が、いつも以上に響く。
いつもは誰かが歩き回り、幾人の足音がしているものなのに。ここの人間が一堂に集まると、他はこんなにもがらんとして寂しくなるのだなぁ。
わらわは羽織っている打掛の襟を軽く握ってから、月明かりだけを頼りに京を探し回る。
今宵は満月。京が妖怪に戻る、月に一度の日だ。
京の妖力が高まり、いつも自身にかけている変化の術が解けて、妖怪の姿に戻ってしまうと言う日なのだ。
不思議とその姿を京は見せたがらず、満月の日は必ずどこかに雲隠れする。そうしてどこかに身を隠して、満月の夜を過ごし、朝には平然と戻ってくるのだ。



