相変わらずの人気じゃな。わらわの人気まで食われる事はないであろうが、二人の人気は凄まじいのぅ。どれ、奴らはどんな風な顔をしておるかの。良い機会じゃ、見てやろう。
わらわはニヤッと口角を上げて、チラッと後ろを向く。
すると面白い事に、見えた二人の反応は真反対だった。
総介の方は笑顔で、遠慮がちに手を振り返していたが。京は全く振り返さなかった、と言うか民を見ていなかった。いつも通りの冷徹な顔で、まっすぐ前を見つめていた。
だから面白そうに様子を窺うわらわと、ばっちり目が合う。
わらわはすぐに意地悪な笑みを引っ込め、「振ってやれ」と目で訴えるが。すぐに「嫌です」と言う、冷ややかな目が返ってきた。
全く、京はどうして他人にこんなにも冷たいのかのぅ。
武田軍の時も、孤高を貫いておったし。人間の様に生きる事になって長いはずだが。人間とは上手く打ち解けないんじゃろうな、きっと。妖怪の心のせいなのか、性格のせいかは分からぬが。京の場合、恐らく後者じゃろうなぁ。
まあ、でもわらわには打ち解けてくれているし。能面の様な無表情を崩してくれるし、他人には見せない部分を知っている。
そう思うと、なんとなく優越感を覚えるものじゃな。嬉しい様な、心がもぞもぞする様な?
わらわはニコニコと民に笑顔を見せながら、頭の中では訳の分からない事を考えていた。そして心中では、面映ゆい様な、言葉に出来ない様な、よく分からぬ感情に飲まれていた。
そして美張城の門をくぐった途端に、民達の声に負けじ劣らずで「姫様ああ!」という大歓声が湧いた。久方ぶりの家臣達も皆元気そうな姿を見せてくれる。
それに喜色を浮かべながら、父上と母上にも謁見をするが。お二人も、わらわを温かく迎え、帰還を心からお喜び下さった。
母上は戦で受けたわらわの傷を見ると、悲しそうな顔をしたが。すぐに「女子の体に傷跡は残してはならぬ」と、よもぎの塗り薬を塗ってくれた。
それから父上が、わらわの帰還を祝って宴を開いてくれた。
城内だけが、どんちゃん騒ぎをしているのかと思えば。風に乗って聞こえる城下の声も同じ程の賑わいだった。
わらわは、美張の平和を感じた。
酒を飲むと美味いと感じる。食事が美味いと感じる。家臣や民が、皆笑っている。憂いた顔をしている者は、誰一人もおらぬ。
わらわはニヤッと口角を上げて、チラッと後ろを向く。
すると面白い事に、見えた二人の反応は真反対だった。
総介の方は笑顔で、遠慮がちに手を振り返していたが。京は全く振り返さなかった、と言うか民を見ていなかった。いつも通りの冷徹な顔で、まっすぐ前を見つめていた。
だから面白そうに様子を窺うわらわと、ばっちり目が合う。
わらわはすぐに意地悪な笑みを引っ込め、「振ってやれ」と目で訴えるが。すぐに「嫌です」と言う、冷ややかな目が返ってきた。
全く、京はどうして他人にこんなにも冷たいのかのぅ。
武田軍の時も、孤高を貫いておったし。人間の様に生きる事になって長いはずだが。人間とは上手く打ち解けないんじゃろうな、きっと。妖怪の心のせいなのか、性格のせいかは分からぬが。京の場合、恐らく後者じゃろうなぁ。
まあ、でもわらわには打ち解けてくれているし。能面の様な無表情を崩してくれるし、他人には見せない部分を知っている。
そう思うと、なんとなく優越感を覚えるものじゃな。嬉しい様な、心がもぞもぞする様な?
わらわはニコニコと民に笑顔を見せながら、頭の中では訳の分からない事を考えていた。そして心中では、面映ゆい様な、言葉に出来ない様な、よく分からぬ感情に飲まれていた。
そして美張城の門をくぐった途端に、民達の声に負けじ劣らずで「姫様ああ!」という大歓声が湧いた。久方ぶりの家臣達も皆元気そうな姿を見せてくれる。
それに喜色を浮かべながら、父上と母上にも謁見をするが。お二人も、わらわを温かく迎え、帰還を心からお喜び下さった。
母上は戦で受けたわらわの傷を見ると、悲しそうな顔をしたが。すぐに「女子の体に傷跡は残してはならぬ」と、よもぎの塗り薬を塗ってくれた。
それから父上が、わらわの帰還を祝って宴を開いてくれた。
城内だけが、どんちゃん騒ぎをしているのかと思えば。風に乗って聞こえる城下の声も同じ程の賑わいだった。
わらわは、美張の平和を感じた。
酒を飲むと美味いと感じる。食事が美味いと感じる。家臣や民が、皆笑っている。憂いた顔をしている者は、誰一人もおらぬ。