後ろから顔色を窺う様な声音で尋ねられ、ワシは我に帰る様に軽く嘆息した。
そして「何もない」と、ぶっきらぼうに答えてから、ふと空を見上げる。
青々とした空に、たなびく様に雲が薄く流れていた。太陽も煌々と輝き、我らに眩しい程の光を注ぐ。そんな靄然とした空で、ピーヒョロロと心地良い声音で鳴きながら、鳶が悠々と泳いでいた。
「これで賽は投げられたと言うもの。はてさて、戦姫は、美張はどう出るかの・・・・返答が楽しみだ」
・・・・・・
「主等は、どう思うた?わらわに申してみよ」
牧之島城を後にし、宿に着いてから、わらわは京と総介を前にして尋ねる。
「我らは姫様方のご意見に従うだけにございまする」
総介が京の分も代弁する様に、滑らかに答えた。
「いや、わらわは主等の意見を聞きたい。先の武田の話をどう思うた?」
総介は尋ねたわらわの顔を神妙な顔をして見つめ、「私は」と訥々と語り出した。
「拙者は正直、武田の傘下に下るなど。と言う、賛同しがたい気持ちにございまする。美張への進軍で、武田軍により命を落とした者もいない訳ではありませぬし。
そして盟約を結ぶ事を皮切りに、奴らはそのまま小国である美張を乗っ取るつもりなのではと思いまする。姫様を戦に駆り出すと言う話も、姫様の戦死が狙いなのではと・・・」
わらわは総介の話に、ふむと唸った。
確かに、総介の言い分も一理ある。武田の狙いも、的を射ている様に思う。
「京はどうじゃ」
わらわが問いかけると、京は「俺は賛成ですね」とすんなりと答えた。
すぐにするりと出た答えに、わらわは軽く呆気にとられた。そして少し遅れてから「どうしてじゃ?」と尋ねる。
「これは、強大な後ろ盾がもらえる好機ですから。武田の名ともなると、他大名達に進軍させないと言う牽制を充分に果たす事が出来ます。
色々な思惑は彼にもありましょうが、それはこちらも同じ。深く考えず、面従腹背でいれば良いのです。
それでも憂慮すべき事があるなら、こちらが先に何か手を打てば良い話。俺達妖怪の流儀でもありますが、化かされる前に化かすのです」
総介とは真反対の、さっぱりと割り切った意見だった。妖怪らしい立場の意見に、わらわも「成程のぅ」と言葉が漏れる。
「うむ。どちらの意見も的を射ていると思うが。やはり懸念となるのは、武田の後ろ盾を得て、どう変わるか・・じゃなぁ」
そして「何もない」と、ぶっきらぼうに答えてから、ふと空を見上げる。
青々とした空に、たなびく様に雲が薄く流れていた。太陽も煌々と輝き、我らに眩しい程の光を注ぐ。そんな靄然とした空で、ピーヒョロロと心地良い声音で鳴きながら、鳶が悠々と泳いでいた。
「これで賽は投げられたと言うもの。はてさて、戦姫は、美張はどう出るかの・・・・返答が楽しみだ」
・・・・・・
「主等は、どう思うた?わらわに申してみよ」
牧之島城を後にし、宿に着いてから、わらわは京と総介を前にして尋ねる。
「我らは姫様方のご意見に従うだけにございまする」
総介が京の分も代弁する様に、滑らかに答えた。
「いや、わらわは主等の意見を聞きたい。先の武田の話をどう思うた?」
総介は尋ねたわらわの顔を神妙な顔をして見つめ、「私は」と訥々と語り出した。
「拙者は正直、武田の傘下に下るなど。と言う、賛同しがたい気持ちにございまする。美張への進軍で、武田軍により命を落とした者もいない訳ではありませぬし。
そして盟約を結ぶ事を皮切りに、奴らはそのまま小国である美張を乗っ取るつもりなのではと思いまする。姫様を戦に駆り出すと言う話も、姫様の戦死が狙いなのではと・・・」
わらわは総介の話に、ふむと唸った。
確かに、総介の言い分も一理ある。武田の狙いも、的を射ている様に思う。
「京はどうじゃ」
わらわが問いかけると、京は「俺は賛成ですね」とすんなりと答えた。
すぐにするりと出た答えに、わらわは軽く呆気にとられた。そして少し遅れてから「どうしてじゃ?」と尋ねる。
「これは、強大な後ろ盾がもらえる好機ですから。武田の名ともなると、他大名達に進軍させないと言う牽制を充分に果たす事が出来ます。
色々な思惑は彼にもありましょうが、それはこちらも同じ。深く考えず、面従腹背でいれば良いのです。
それでも憂慮すべき事があるなら、こちらが先に何か手を打てば良い話。俺達妖怪の流儀でもありますが、化かされる前に化かすのです」
総介とは真反対の、さっぱりと割り切った意見だった。妖怪らしい立場の意見に、わらわも「成程のぅ」と言葉が漏れる。
「うむ。どちらの意見も的を射ていると思うが。やはり懸念となるのは、武田の後ろ盾を得て、どう変わるか・・じゃなぁ」